第17話 レーメン第五小学校
「一年
入学式は順調に進み、この時校長による点呼が行われていた。校長に呼ばれた大柄で小太りな子供が、立ち上がってはいと大きく返事をした。
「一年C組十二番、ルドルフ・ホーゲルシュタインくん」
今度は赤髪の小柄な子供が返事をした。そんな中、カスパールは頭の中で考え事をしている。
(明日から給食があるって言ってたけど、給食ってどういうものなんだろう……)
まったく関係のないことを考えているうちに、どんどんカスパールの順番は
「一年C組十五番、カスパール・リヒテンベルグくん。……か、カスパールくん?」
考え事に集中していたカスパールは、校長が名前を呼んでいるのに気がつくと慌てて椅子から立った。
「は、ひゃい! 給食に牛乳はやめてください!」
体育館にどっと笑いが起きる。保護者や新入生だけでなく、なんと
「ぶっ、か、カスパールくん……。すまんが、この学校の給食では毎日牛乳が出てくるんだ」
カスパールは校長の答えに、えーっと残念そうな回答をする。校長はそれにはまったく答えず、次の生徒の点呼を始めた。
カスパールの右前方面では、レベッカがまだ笑っていた。
入学式が終わり、生徒たちはそれぞれの教室に入っていく。一クラス四十人、一学年八クラスのこの学校は、生徒数が多く活気がある校風と言えるだろう。
カスパールのいるC組では、全生徒が席に座り担任の到着を待っている。少しの間待っていると、教室の外からハイヒールのカツカツという音が聞こえてきた。
そのまま教室の扉がガラガラと開けられ、一人の若い女教師が入ってくる。長い金髪と青い瞳を持ち、ハイヒールを脱いだとしても男性の平均ほどあるであろう高い背丈が特徴的だ。
「やあ、みんな。私がこのクラスの担任、フレイア・ブルクハルトです。これから私がみんなにお勉強を教えることになるので、仲良くしてくれたら嬉しいです。よろしくおねがいします」
フレイアは教壇に立ち、手に持っていた荷物を置いてから簡単な自己紹介をする。彼女の自己紹介が終わると、生徒たちは大きな声で「よろしくおねがいします」と言った。
「……さて、みんな。あとで教科書配布があるけど、その前に……。もし私に質問があったら、遠慮なくしていいぞ」
何人かの生徒が、はいはいと手を挙げる。その中には、カスパールの手もあった。
「じゃあ……そこの金髪くん」
フレイアがカスパールを指差す。カスパールは席を立ち、口を開いた。
「先生って、魔法使えるんですか?」
「いやー、使えないことはないけど、箒や
フレイアが右手に力を入れると、上腕に力こぶができる。彼女の話を聞いた生徒たちは、口々にすごいすごいと褒めていた。
「素手で倒したと言っても、二年前に夜花火をしてたらスライムが二匹ほど現れたので、そいつらを倒したってだけだ。今思えば、花火を使ったほうが良かったかなあとか思ってたりもする」
それじゃ次、とフレイアが別の人の質問に答えようとしたその時だった。再び教室の扉が開き、中年の教師が顔を
「フレイア先生、配布用の教科書を持ってきました」
文字通り頭を使って扉を開け、教室の中に入っていく。フレイアの力を借りえいやと教科書を教壇に乗せると、彼は失礼しましたと言って教室から出ていった。
生徒たちの質問タイムは、担任の武勇伝
この日の学校生活が午前のみで終わり、全生徒が校舎から出て帰路に着く。カスパールはレベッカとともに、迎えの車を校門で待っていた。
「ねえ、カスパール。あの『牛乳はやめてください!』って言ってたの、どういうこと?」
レベッカはニヤリとした表情を浮かべ、カスパールをからかう。
「た、ただ給食のこと考えてただけだよ」
「……牛乳は健康のためにいいって、うちのおばさんが言ってたわよ」
「……生臭くてやだ」
カスパールがぼやくと、遠くから砂で汚れた灰色の車が走ってくる。レベッカはその車を見ると、大きく手を振った。
「それじゃ、また明日ね」
車がある程度の場所まで近づくと、彼女は今度はカスパールに向けて小さく手を振った。
車は校門の前で止まり、レベッカを乗せて進もうとする。
「うん、また明日!」
レベッカを乗せた車が発進する前に、カスパールも彼女に別れの
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