あるオタクの日常:休日の寝起きVer
オタクの休日というのはお世辞にも早いとは言えない。
泥のように眠るとはよく言ったものだが、平日に溜まったストレスを溶かしていくような深い眠りについている私が午前中に目覚めることは無い。
もしかしたら溶けているのはストレスではなく私自身なのかもしれない。
と、12時を少し過ぎた頃に設定された目覚まし時計を合図に、愛しの布団から抜け出して朝食を食べに行く。
正確にはもう昼食の時間なのだが、文字通り起きたばかりの私の胃はまともな昼食など受け付けないだろう。
リビングの棚に並んでいるケースからシリアルを選ぶ。
「今日は……チョコでいいか」
フ〇スティのチョコフレークを器に盛って充分に牛乳をかける。
やや少なめの方がザクザク感が残って良いと思っている人も多いと思うが、私はむしろ全体が浸るまで注ぐ派だ。
確かに食感で言うならば入れすぎとも思える量だが、私は全て食べきった後のシリアルの甘味が溶けだした牛乳をゴクゴクと飲み干す瞬間がとても好きなのだ。
「おっと、忘れてた」
牛乳を片付け、さあ食べようかといった瞬間、スプーンを出し忘れていることに気が付いた。
自分で思っている以上に寝ぼけているらしい。先に顔を洗った方がいいだろうか?
そこまで考えたところで、歯を磨き忘れていることを思い出した。
人間の口内は唾液の分泌量が落ちる睡眠中に菌が繁殖するのだという。
もし思い出すのが朝食を終えた後だったなら、私は増殖した菌に糖分という格好の餌を与えていただろう。危ないところだった。
奥歯の隅まで丁寧に磨いていく。万が一虫歯になったりしたら後が面倒だ。
一通り磨き終えたら専用のマウスウォッシュで濯ぐ。刺激が強いのが難点だがこれがあるのとないのとでは大違い……らしい。
らしいとは我ながら根拠に欠ける物言いだが、事実詳しくないのだから仕方ない。母の勧めで備蓄していなければ、これに触れるのは歯医者の世話になった後だっただろう。
と、更に忘れていることは無いか入念にチェックしてから定位置に戻った。
案の定というべきか、牛乳をしっかりと吸い込んでふやけきったシリアルにはサクサクとした面影は無かった。
落胆。今こそこの言葉を使うべきであろう。
「あ、でも甘い」
不幸中の幸いとは少し違うがこれはこれでいいだろう。一口目のザク甘を逃したのは痛いがまた明日食べればいい。
というか大した量でもないし二杯目行けばいいのではなかろうか。
「ごちそうさまでした」
(まあ食べないんだけどね。太るし)
私にアウトドア趣味はみじんもない。仕事の他に部屋から出る用などないのだから、余計なエネルギー補給は出来る限り控えなければ短期間で肥満体が完成してしまうだろう。
手早く洗い物を済ませたら自室へと戻った。
雪村遥人の短編集 水咲雪子 @Yukimura_Haruto
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。雪村遥人の短編集の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
雪村遥人のエッセイ集/水咲雪子
★6 エッセイ・ノンフィクション 連載中 9話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます