第9話 ハッピーエンド?
『あの方小説家さんだったんですね。』
結子の計らいもあり、最近マイクと流星はよく一緒に休憩を取っている。
どうやら有名な小説家が常連だったらしく、昔取材にきた担当から、また近々有名小説家の行き付けの店として紹介させて欲しいと連絡があったのだ。
『マイクさん気付いてました?』
実は勘違いしていた。
流星と自分が近くにいる時に、熱い視線を感じて振り返る程だった為、てっきり流星に気があると思って、その常連さんがいる時は必要以上に流星に近付いてマウントを取っていたぐらいだ。
恥ずかしい。マイクは自分で気が付かないだいぶ前から、流星に対して気持ちがあったようだ。
『それより、アレクはオープンしてから来なくなったな。』
マイクは気まずくなり、話題を変えた。
やっぱり、自分のお店がオープンすると忙しいのだろう。
マイクの店の常連さんも思った程流れなかったし、同じ地域の活性化としては近くに新しいレストランが出来たのは良かったかもしれない。
『アレクの所は、皆あいつを追い掛けてきた従業員ばかりだから、オレなんかに会いに来る暇無いみたいですよ。』
ニヤニヤしながら、流星は答える。
あれだけ付きまとわれていたんだ。
清々したのは流星だけでなく、マイクも同じ気持ちだった。
『結子さんからのLINE見ました?』
流星は向かいの席から、マイクの隣に座り直して、スマホの写真を見せた。
流星に近付かれると、2人きりなのを意識してしまう。
LINEの写真は温泉に行った時のものだ。卓球や、ビンゴ大会の時の写真や、豪華な料理が写っている。
『先週の事なのに懐かしいな。』
と、結子さんといつLINEする程仲良くなったのか気になり写真に集中出来ない。
最後までスクロールすると、旅館の立派な庭園の写真で終わる。
『あの夜は月が綺麗でしたね。』
夏目漱石が『I LOVE YOU』を日本語に訳した言葉が『月が綺麗ですね』と思い出したのは次の日の朝だった。
近より過ぎて、サラリと髪の毛が顔に触れる。
びくっと、マイクは腰を上げてしまう。
隣の流星もゆっくりと立ち上がり、マイクを見つめる。
流星の顔が段々と近付いてくる。
え?オレされる側なの?
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