第8話 月が綺麗ですね おかわり

マイクさんと温泉なんて夢みたいだ。

何とか、あの手この手で同室をGETしたけど、どうすれば近付けるだろうか?


『流星くん。流星くん。』

浴衣の裾をつんつんと結子がひく。

『マイクさん、日本酒弱いらしいよ。』

何故、マイクの事を考えていた事がわかったのだろう。

怖いお方だ。

『その情報は確かですか?』

何故か2人とも段々と小声になっていく。

『オーナーと、旅館の予約確認の時に話したの。何年か前に日本酒で酔ったマイクさんに甘えられて、しょうがなく家にお持ち帰りしたって。オーナーのベッドに寝かせて、自分は奥さんと子供と一緒に寝る事になったって、言ってたわ。』


結子と流星は見つめ合い、がっつりと握手をする。2人は同盟を組む事にした。


宴会場にはもう、自分とマイクしか残っていない。

結子が卓球大会を企画してくれたお陰で、皆卓球場に移動したようだ。


マイクは情報通り日本酒には弱いようだ。

ワインや、ビールを飲んでるのを見たことがあるが、いつも平気な顔していたので、顔を赤くしたのは初めて見た。


流星は元々下戸なので、アルコールは1口も飲んでいないが、マイクの顔を見るだけで何だか顔が火照ってしまう。


女将さんの声掛けで、打ち合わせ通りマイクは庭園に向かうようだ。上手く行きすぎて怖いくらいだ。

自販機で水を購入する。

何て言って渡そう。

『お疲れ様です。』『大丈夫ですか。』『はい。どうぞ。』

そんなんじゃ、いつまでたってもマイクの特別になれない。

パタパタとスリッパを鳴らしてとマイクの後を追い掛ける。


庭園に出ると月が明るい。


月明かりの下でマイクが振り返る。

アルコールのせいか潤んだ瞳で流星を見つめている。

明るい茶髪は月明かりで金にも見える。

口元は何か言おうとしているのか、半開きになっている。


『月が綺麗ですね。』

流星は何とか言葉を絞り出した。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る