第5話 アレク

アレクは将来が約束されたサラブレッドだった。もちろん、実力も兼ね備えていたし、父親の店を継ぐか、独立も考えていた。留学は半年の予定だったが、誰かさんのせいで1年に伸びた。


ルームメイトの流星は、勉強熱心だった。

部屋に居るときは、いつも机に向かっていた。

教わっている事以外も自習しているようだった。


『ごめん。眩しかった?』

流星が振り返る。

アレクは夜中に目を覚まして、流星の事を見つめていたようだ。

『いや、トイレに起きただけ。』

アレクはベッドから体をおこしながら、トイレに向かう。


いつからだろう?ここ最近夜中に目を覚ましては流星を見つめているのは?気付かれたろうか?

アレクの恋愛対象は男性だが、ルームメイトと面倒な事にはなりたくない。

なるべく関わらない様にしよう。


『アレク?大丈夫?』

トイレの扉をノックしながら流星の声がする。

どうやら色々と考えすぎてトイレに長い間こもってしまっていたらしい。

手を洗うついでに顔も洗う。

流星を好きにならないように気を付けよう。


トイレの扉を開けると流星の心配そうな顔が飛び込んできた。

『好きだ。』

アレクは流星の事を抱き締めながら告白していた。


と、まぁこんな感じ。

流星に惚れたはいいけど全く相手にされず、留学先では只のルームメイトに終わった。

叔父が新しくレストランをオープンする場所を何処にするか決めかねている時に、日本を激押ししたアレクだった。


アレクが働く予定のレストランは流星のレストランの目と鼻の先だった。

世界的な有名店が日本にオープンするのだ。

流星が働いているレストランには申し訳ないが、客がこちらに流れてくるだろう。

その流れで流星も引き抜けたら最高だな。


アレクは流星を諦めていなかった。






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