World's Best Mother|わたしのママは世界一

わたしの名前は、串本優香。埼玉県にある小学校に通っている小学4年生。明日から小学校に入って4回目の夏休みだけど、今回の夏休みもコロナウイルスっている病気がまだ流行ってるらしいから、遠くにはあまりお出かけは出来なさそう。でも、夏休みの宿題の「おうちのおしごと研究」という宿題は意外に楽しみにしている。わたしはママのおうちのお仕事を研究することにした。お気に入りの「優香ノート」と、小学2年生で初めて行ったスカイツリーで買ったピンクのペンを準備して、ママの真っ白なワイシャツを白衣みたいに着たわたしは、まるで博士みたいになった気分でワクワクしてる。明日から早速ママのおうちのおしごと研究を始めることにする。


 「シャァ!」カーテンを勢いよく開ける音と、閉じたままでも眩しいくらいの太陽の光で目を覚ました。「優香、朝よ。夏休みでもそろそろ起きなさい。」ゆっくりと目を開けると、ママが笑顔でこちらを見下ろしていた。まだ眠いのに、とモゾモゾしていると、枕元の優香ノートが目に入り、自分が博士になる日だという事を思い出して優香は起き上がった。ママが部屋から出ていくのを確認し、わたしはノートの1ページ目に早速ママのおしごとを書いた。


-- ①カーテンを開けて優香を起こす --


 まだまだ眠っていたいけど、今日からわたしは博士だ。ママの白いワイシャツに着替えて、洗面所で顔を洗いに行った。洗面所で顔を洗っていると、ママがやってきて「水を出しっぱなしにしないの!」と言ってくる。いつもの事だからうるさいなあと思いながらも、これもママのおしごとなのだろうとノートに書いていく。


-- ②水を出しっぱなしにしてたら優香を怒る --


 リビングに行くと、朝ご飯のパンと豆乳が置かれていた。ママは体に良いことが大好きで、わたしは学校で飲む牛乳の方が好きだけど、豆乳の方が体に良いのだとママが言うから毎朝豆乳を飲んでいる。ご飯はわたしが食べ切れるだけの量で、ご飯を残すことをママはとても嫌っている。これもママのお仕事なのかな?と、わたしは2つ書き足した。


-- ③優香の体に良いものを準備する --

-- ④優香がご飯を残さないようにする --


 朝ご飯を食べ終わったわたしは、優香ノートを開いて、まだ朝だけど4つもかけたことが嬉しくなった。今日はパパもお休みで、優香よりも遅くパパが起きてきた。トイレ行ったり、顔を洗いに行ったりとするパパの後ろを、ママがついて回っては「電気つけっぱなしにしないでよ!」とパパを叱っていた。ママは朝から忙しいなあと思いながら、優香ノートに5番目のお仕事を書き足した。


-- ⑤パパが電気つけっぱなしだったら、パパを叱る。 --


 パパはご飯を食べ終わると、ソファーにゴロンとして「今日も暑いなぁ」と言いながら、ダラダラしてる。おうちのおしごと研究をパパにしてたら、今のところ朝からママに怒られて、ソファーでゴロゴロしてることしか書けなかった。ママは「暑いから、涼しいところにでも行きましょうよ」と寝転がったばかりのパパを起こして、背中を押して部屋へ着替えに行かせて行った。夏の暑い日はよく涼しいお店に行く。わたしはお出かけできて嬉しいけど、パパは「もうちょっとゴロゴロさせてくれよ〜」といつもブツブツ言っていた。ママが言うには電気代の「せつやく」ってやつらしい。


-- ⑥涼しいところに、連れてってもらえるようにパパを起こす --


 6個書いたところで、1ページ目がいっぱいになった。わたしは書いた6つを見直して、なんだかママは怒ってばかりだなと思った。きっと世界で一番厳しいママだとわたしは思う。これもちゃんと書いておこう。


-- < わたしのママは世界一厳しいママ > --


 わたしの名前は串本優香。埼玉県にある実家を明日で引っ越して、新社会人として東京で生活をしようとしている。宝物をたくさん入れた箱の1番上にあった「優香ノート」を箱に戻し、蓋を閉める。今ならわかる。わたしのママは、地球にも、わたしにも世界で一番優しいママだったことが。

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