蜃楼幻想譚

みゅな🍯

第1話 謎の黒髪姉弟

「ねぇ」


「ん?」


「ここまで着いてきてもらってあれなんだけどさ…、どうして貴方は私達の旅に着いてきてくれたの?」



黒髪の包帯の少女…『黄朽葉 瑞穂きくちば みずほ』は黒髪の医者らしき服装の男に今更ながらの質問をした。男は頭にハテナを浮かびつつ苦笑いしながら彼女の頭を撫でた。



「は?いきなりヘンな質問だなぁ」


「ずっと気になったから」


「んー、そうだなぁ」



彼は何か考えるような仕草をするがその時間は10秒も経たなかった。



「……約束したからな」


「……約束って言葉嫌いって言ってなかった?」


「うん、今でも大ッッッッッッ嫌い」


「でも、どうして?」


「………お前らの行く末を見てみたいから…かな」


「…ふーん」


「聞いてきたのお前だろうが、なんでそんな興味なさげなんだよ」


「貴方らしいなぁって」



瑞穂はそんなことを思いながら手に持っていたパンをもぐもぐと食べ始めた。



「………今までの事、一回振り返ってみっか。まだ寝たくねぇんだろ?」


「うん」


「………まずきっかけは…。」




────────────────────────────



虹燎崩壊厄災から1年。


大半失ってしまった虹燎郷も少しずつかつての姿を取り戻し始めた。

しかしこれで終わりではなかった。さらに追い打ちをかけてくるかのように別の問題が発生したのだ。


それは身体から黒い液体を嘔吐してしまい、全身が蝕むように麻痺する病の発生。その病にかかってしまうものは100%死に至る。

もう助かりようがないのだ。



そんな危険な病がほぼ半年前から起こっており、虹燎郷に再び混乱を招くことになった。


そんな時、たった一つだけの治療法が見つかった。


それは『幻の花』と呼ばれる桃色がかった白い花を磨り潰した解毒薬を飲ませることだった。


そして、それができるのはたった一人の男のみ。


人々はその男を『霽月』に次ぐ二つ目の救世主…

幻花まほろばな』と名付けた。






「あっきらさぁーん!!!」



とある小屋で元気な少女の声が響き渡る。



「ふぁぁ〜、なんだよこんな朝っぱらから騒いでよぉ……」



上から一人の男が眠そうに目を擦りながら下へと降りていった。



「もう!今日患者さんの所に診察に行く予定ですよ!早く行かなくちゃですよぉ!」


「まだ約束の時間じゃねぇだろ…」


「『明楽あきら』さんすぐ約束の時間に遅れてくるじゃないですかぁ!こっち文句とかつけられて大変なんですよ!」


「勝手に助手になったおめぇの問題だろうがよ…。」


「でもぉ…」


「あー、わかった、でもせめて身支度ぐらいさせろや。まだ薬の調合すら終わってねぇし」


「え!?あれだけ夜の内にやっててくださいって約束したじゃないですかぁ!」


「約束約束うるせぇなぁ、お前だって朝っぱらから犬みたいなきゃんきゃんでけぇ声出すなって約束破ったじゃねぇかよ」


「そんな約束してません!!それに私うるさくないもん!!」


「いやうるせぇんだよ」



もう相手するのにも疲れてきた男…『北条 明楽ほうじょう あきら』は身支度を整え、薬の調合をし始めた。その様子を興味津々で見る桃色髪の少女、『香林坊 海璃こうりんぼう かいり』は話し掛けてみる。



「あの、いい加減その薬の調合の方法を教えてくれませんかね?」


「あ?これむずいんだぞ?これには精密で細かい作業が山ほど…」


「でも私この作業何回も見て思ったんですけどこれ私にも出来そうじゃないですか!ほらこれとか…!」


「うわっちょ、勝手に触んな!!」


「きゃぁ!」



海璃が手を伸ばそうとした時、明楽はすぐに海璃の手を止めようと掴む。としようとしたのだが誤って後方に突き飛ばしてしまった。

その勢いで海璃は尻餅をついてしまい、手に持っていた資料がバラバラと散ってしまった。



「あ…、わりぃ、つい…」


「うぅ…、ごめんなさい…邪魔して…。今から資料片付けますね」



そう言って海璃はバラバラになってしまった資料を集め始める。

明楽には分かっていた。彼女の表情が。

彼女は犬のように分かりやすくしょぼんとしていた。彼女に犬の耳を生えてたら、きっと耳を下に下げるだろう。それくらいわかりやすい。



(わりぃことしたな……)



と、内心思いながら再び作業を始める明楽。

全ての資料を集め、まとめ直した海璃は今度は邪魔しないように3m離れて左側のエメラルドグリーンに脱色したもみあげをいじりながら、明楽の様子を見ていた。



「…………犬っころ助手」


「あ、はい!」


「その距離で見つめられても逆に集中できん」


「( ´•ω•` )」


「………外行ってこい」


「へ?」


「暇なんだろ?そいつの散歩でもしてやってこい。」



明楽はいつの間にか海璃の頭に乗っていた白猫『ハムちゃん』を指さして海璃に指示をした。



「………はい!!」



暇すぎる自分を気遣ってくれたのだと察した海璃はにぱっと喜びながら玄関近くに資料を置いて、外に出ていった。



「ほんとに犬だな………」




「ふふん、ふふん、ふふん、ドレミファソラ〜シ♪」



著作権に若干引っかかりそうな曲の鼻歌をしながらハムちゃんの散歩がてら小屋の周辺を歩き回る海璃。もちろん辺りには何も無い。あの様子だと明楽はまだ調合に時間がかかるだろう。そんなことを考えながら少し遠くへ行ってみようかと陽気なことを考える海璃。



「んー、やっぱりこの先にはなんもないかぁ〜、………ん?」



少し奥の方へ歩いてみるとそこには何故か誰かの手書きで書いたであろう立ち入り禁止の看板が。



「この字……見た感じ明楽さんの文字だよねぇ……、…ゴクリ」



ハムちゃんをぎゅっと抱きしめながらどうするべきか悩む海璃。

興味はあるけど、明楽に怒られること確定だろう。



「うーん…ハムちゃんどうしよっか?」


「にゃ〜( ˙꒳​˙ )」



ハムちゃんの顔をじーっと見る海璃。まぁただの白猫に答えを求めても無駄かぁ…と思った海璃。気になるけど怒られるのが怖いので引き返すことにした海璃。その時だった。



「うにゅウウウウウウウウウウウウウウウッ!!!!!!」


「ふぎゃ!?」



突然後ろからなにかに体当たりされた感覚がした。海璃はそのまま顔から転んでしまった。ハムちゃんは手が緩んだのをいいことに軽々と抜け出し、海璃の元へスタスタと戻ってくる。



「いてて……ッ、え、何!?」



鼻を抑えながら起き上がる海璃。後ろへ向くと虹燎郷に住んでるものとはとても思えない服装をした黒髪にところどころ赤い線が入ったのロr…、女の子がこちらをじっと見つめていた。



「うにゅ!お前ら宇宙人かぁ!?(´⊙ω⊙` )」


「はい?」


「にゃ( ˙꒳​˙ )」



なんだ人を宇宙人呼ばわりして。


と思ったがそれは胸に留めておこう。

海璃は変な喋り方をする女の子に話しかける。



「え、えーと、どうして体当たりしてきたの…?」


「それは……勢いで仕方にゃく!✨」


「はぁ……」



海璃がハムちゃんを抱えて帰ろうとしたら、黒猫は海璃の上着にしがみついて止めてきた。



「待って待って待ってにゃぁ!、どうしてもお前に助けて欲しいことがあるんだぞい!」


「え?」


「りあちーがぁ…みじゅほがぁ……!」



黒髪の女の子は今にも泣き出しそうな顔で助けを求めてきた。

りあちー…おそらく人の名前なのだろう。だとしたらこの子の顔を見る限りおそらく黒い液体の病にかかってしまったのだろう。ならば早く助けに行かなくては。



「りあちー?みじゅほ…さん…が危ないの?」


「うにゅ…」


「分かった、今から先生呼んでくるから一緒に着いてきてくれる?」


「そんな時間はにゃいにゃ!!いいから着いてくるんだぞい!!」


「えっ、ちょっ!?!?」



女の子とは思えないほど力強く引っ張り、それに海璃は流されて行ってしまう。



「あ、ここ立ち入り禁止の…!」


「そんなの関係ないにゃ!早くしないとぉ…!!」


「えぇ〜!?!?」






「………はぁ、やっと終わった…。」



薬の調合を終わらせた明楽。後ろを振り返るがそこには海璃の姿はなかった。


そういえばハムの散歩に行かせたんだなと思い出したく明楽は重い腰を上げ、ひとつも零さないように丁寧に瓶の中に入れる。ようやく準備を整え、約束の時間まであと1時間ほど。そろそろ行かないとまずいという感じだろう。


部屋の壁のハンガーにかけている薄灰色の白衣を着て出掛けようとした時、突然バタンっとドアの音が鳴り響いた。



「ぜぇ…ぜぇ…」


「……なんでお前がここにいんだよ」



そう、ドアを開いた者の正体は『海璃』ではなく、青髪の少年『香林坊 魁都こうりんぼう かいと』の方だった。汗だくで来た魁都は明楽の目を見て怒りの表情を浮かべる。そして明楽の胸ぐらを掴む。



「……海璃はどこですか?」


「は?犬っころ助手?」


「海璃はどこですかって聞いてるんですよ!」


「あいつならハムの散歩しに行ったけど?てゆかなんでそんな焦って…」


「妖力でわかったんです。海璃が今立ち入り禁止区間に入ったんですよ!貴方が勝手に作ったやつのね!!」


「………は?」



言っている意味がわからない。

だって海璃は好奇心旺盛だが守らなくちゃいけないものは守る主義の少女だ。随分前に立ち入り禁止区間は絶対に入るなと言っておいたから、入るわけないしすぐ帰るだろうと考えていたから特に何も考えてなかったが……



「……ちょっと出かける、お前はここで待ってろ」


「は?ちょ、逃げないでくださいよ!」


「いいからここで待ってろ」


「……!」



圧がすごい。

彼の綺麗な濃い桃色の宝石のような瞳が今にも光りそうになってるのを感じた魁都。


この圧にどうしても抗えなかった魁都は……



「…分かりました。でも絶対帰ってきてください。約束ですよ」


「わぁってる」



こいつも"約束"か…


どうしてそんな言葉を使えるんだろうと思いながらも明楽は駆け足で外へ出ていき、立ち入り禁止区間の看板を見つける。



「………ははっ、きったねぇ字だな」



そんなことを思いながら立ち入り禁止区間へ入っていった。





「ほら!ここだぞい!」


「えぇ…!」



黒髪の女の子に連れられた海璃。明楽があれほど入るなと言っていたのだからおぞましいところなんだろうと思っていたが、その先には花弁に薄い桃色がかった白い花の花畑が広がっていたのだ。


あまりの美しさに海璃はつい惚れてしまう。

そしてその花をよく見てみると、それは明楽が薬の調合に使ってる花ではないか。なぜ明楽はこの花を隠してきたのだろう。これを広げればもっとあの病気の対処ができるようになるのではないか?


そんなことを考えていると、再び女の子が海璃の腕を引っ張る。



「こっち!!」


「え、あ!」



流れるまま連れてかれると、先に進むごとに赤い液体が見えてきた。

鼻の聞く海璃は少し嗅いだだけですぐわかった。


血痕だ。



徐々に嫌な感じがした海璃は持ち前の正義感を昂らせ、急いで奥へと向かう。するとだんだん人影が見えてきた。更には金属音が聞こえてくる。


誰か争いをしている…?


さらに奥へ進むと、その人影がはっきりと見えてきた。



「………え?」


「みじゅほ…!」



黒髪の女の子が指指した先、そこには青基調の大鎌を扱う黒髪のショートウェーブの少女と、黒く禍々しい人型の何かが戦っていたのだ。その光景をずっと見ていると、女の子は叫ぶ。



「みじゅほ!助っ人呼んできたぞい!!」


「…え?」



黒髪の女の子は海璃の背中を思いっきり押した。



「え、ぇぇぇぇぇぇえええええっ!?!?」


「っ!」


「あ、ちょぉ!?!?」



流れてく海璃の前に暗闇は攻撃の流れ弾が当たりそうになる。

海璃は間一髪のところで避けて、こうなったら!という勢いで暗闇に突っ込む。



「おりゃぁぁぁぁぁ!!!!!(°□°)」


「!?」


「え?」



突然海璃に頭突きされた暗闇は体勢を崩してしまい、よろめいてしまう。一瞬何が起きたのか分からなかった少女なのだが、すぐさま切り替え、大鎌を暗闇と海璃目掛けて斬りかかる。



「うわっ!?ちょぃ!?!?」



海璃はその攻撃をまたもや避けるが、暗闇は見事に斬られてしまう。

暗闇はその少女の攻撃を受けた途端、何故か笑い始めたのだ。



「…!?」


「ふっ、あっはははっ!君の攻撃は本当に奥底まで突き刺さってくるよ…!ああ…気持ちいい……ッ」


「……なんで…」


「……………………………」



海璃はその暗闇の発言を聞いてこう思った…


きもッッッッッ!!!と。



「いくらなんでもキモすぎるよ」


(私の思ったこと代弁してくれてありがとね!!!!!)


「あぁ…、ますます君のことが"再び"欲しくなっちゃうよ…っ!もう一度戻ってこないかい?」


「嫌、私やる事あるし」


「その願いも僕なら叶えてあげられるよ?」


「生憎私は貴方みたいな変態のお世話になりたくないから。今すぐ死んで貰わないと」


「ふふっ、そうこなくっちゃ!!!」


(え?私の事無視ですか?)



そういうと暗闇は大鎌を抜き、少女に返す。

海璃のことを気にも留めず、暗闇は再び少女に攻撃を仕掛ける。



「ほら、にゃにをやってるんだぞい!」


「え、でも…!」



その時だった。

暗闇の足元から大きな白い花が現れ、それは暗闇を大きく包み込んだのだ。そう、食われた。



「うぇ!?!?」


「…なにこれ」



何が起きたのか理解ができない海璃と少女は戸惑いを隠せずにいた。

しばらくすると白い花は少女の方に狙いを定めた。



「……まただ」


「それ……明楽さんの……」


「…貴女、知ってるの?」


「うーん……、私も見たことあるだけでなんとも…、っていうかでかくない!?どーやって対処すればいいの!?」


「……斬り裂いて助ける」


「彼奴を!?やめなよあんなキモイやつ!!」


「…いやそっちじゃない、……あの中には弟がいるの」


「!?」



あの白い花の中に人がいる…。

そう考えるとゾワッとしてきた海璃。しかし少女はその白い花に向けて大鎌を構える。その時だった。



「あのさ、ここで暴れられるのすごい迷惑だからやめてくんねぇかな?」


「!?」



後ろ姿から男の声が聞こえてきた。

聞き慣れた声に海璃ははっと後ろを振り向く。そこには明楽がやれやれとした顔でこちらに向かってきたのだ。



「明楽さぁん!!どうしてここに!?」


「お前の片割れの犬っころに頼まれたんだよ」


「え?!魁都がぁ!?あの明楽さん大っっっっっ嫌い魁都がぁ!?(゚Д゚)」


「なんだこいつ!?お前の新しい助っ人かいにゃ!?(´⊙ω⊙` )」



めっちゃ驚く海璃と黒髪の女の子を他所に、明楽は少女に話しかける。



「おい、そこの黒髪女」


「……邪魔しないで人間。私はこいつを斬る」


「邪魔なんかしねぇよ、でもまぁこいつは俺に任せてくんねぇか?なんとかしてやるから」


「え?明楽さんが吹っ飛ばしてくれるんですか!?(´。✪ω✪。 ` )」


「いや?俺戦えねぇけど?」


「へ?( ゚д゚)」


「はぁ??(´⊙ω⊙` )」


「は?」



思わず素っ頓狂な驚き方をしてしまった。



「まぁ、見てろ」



そう言いながら明楽は大きな白い花…、食虫植物に近づいていく。



「危ないですよ!明楽さんまでマミってしまいます!!」


「おいこら」



明楽と食虫植物の距離が1m未満になったその時、白い花は明楽に急接近して……………


なんと、今まで食べたものを吐き出したのだ。

その中には二人の人物がベトベトした液に濡れていた。おそらく食虫植物の体液だろう。一人は先程食われてしまった暗闇、もう一人は…



「『凛暁りあき』!!!」


「りあちー!(´;Д;`)」


「うぁ……、姉ちゃん…?ネロ…?……んー、気持ち悪っ……」



黒髪の少女と女の子は凛暁と呼ばれた黒髪の赤いマフラーの少年に近づく。一方暗闇を纏った人物は面白おかしく笑いながら食虫植物から離れた。



「いやぁ…まさか君に会えるとは思わなかったよ……、『幻花げんか』くん。」


「いや俺お前のこと知らんのだが」


「え!?明楽さん知り合いなんですかぁ!?」


「だから知らねぇって言ってんじゃん」



二人が会話してることに驚く海璃。

そんなことは置いといて暗闇の人物は話し始める。



「そうだった、君は記憶力が乏しいからねぇ」


「それ俺の事鳥頭って言ってんだろ」


「ふふ、まぁ君がここにいるんじゃ少々場が悪い。僕はこれにて引かせてもらうよ」


「……さっさと消えろ、この場所まで穢しに来んな」


「ふふ、じゃあ皆の衆、また会おう!」



暗闇の人物は指をパチンと鳴らすと、さらに暗闇を纏って消えてしまった。面倒臭い野郎の相手をしたなと思いつつ、明楽は黒髪の少女達の元に向かう。



「そいつ平気か?」


「うん……、意識はあるよ」


「大丈夫!?ほんと良かったぁ〜〜!!」


「うにゅ!?(´⊙ω⊙` )」



海璃が黒髪の女の子の頭を撫でながら無事を祝う。



「そういえば、明楽さん、さっきの白い花は…」


「あれ人食うぞ」


「ヒェッ!?(゚Д゚)」


「だから入んなって言ってんだよ、ま、詳しいことは後で話すわ 」


「ほ、ほえぇ……、ところでえっと…凛暁くんだっけ…?大丈夫!?」


「あ、はい、なんとか……」



凛暁と呼ばれた少年は弱々しくも立ち上がり、明楽と海璃の二人に謝罪とお礼を言う。



「えっと…、すみません、うちの『ネロ』が…貴方達を強制的に呼んでしまったみたいで……」


「うにゅ!?ぼくはりあちーとみじゅほを助けたいがためにこいつも呼んだんだぞい!あっきーは勝手についてきただけだぞい!」


「気持ちは嬉しいけど二人を巻き込むことじゃないでしょ…、まぁ助かったけどさ…。本当にありがとうございます…」


「………ありがとう」



黒髪の少女と少年…おそらく姉弟なのだろう。

ぺこりと二人とも謝る。それにつられて小さな女の子もぺこりと謝る。



「あ、大丈夫だよ!!君達が無事でよかった!!、ところで君達はどこから来たの?ここは明楽さんが勝手に作った立ち入り禁止区域なんだけど…」


「勝手に建てたとはなんだ」


「あ、すみません…、そうとは知らずに…。実は俺たち…別世界から飛空挺で来たんです」


「………ほへ?(°▽°)」


「は?」


「……信じて貰えないですよね…」


「りあちー!こういうのは実際に見てもらった方が早いんだぞい!ついてこい!(`・∀・´)」



別世界?飛空挺…?


なにかの冗談かと思った2人だが、女の子が二人の腕を引っ張って案内する。たどり着いた先は丘とは少し言いにくいほど開けた場所。

そこには確かに小さな飛空挺らしきものが撃墜されていた。



「………わーお( ◉ω◉ )」


「飛空挺か…、え?これで宇宙飛び回ってんの?」


「まぁそんな感じ……」


「へぇ〜」


「明楽さん!何を平然に返答しちゃってんですか!?これすっっっごい大発見ですよ!!!!」


「はいはい」


「え!?すっごぉぉ!!!!これ誰が作ったの!?」


「え?えーと……ドクター…?」



ふたりがそんな会話をしている間、明楽は飛空挺の周りをじっくり見る。それについてくる少女。



「……貴方、わかるの?」


「んー、これちょいあれだなぁ…、……3日かかるわ」


「3日…?え?直せるの?」


「一応」


「ほんとかいにゃ!?」


「幸い大事なとこはお陀仏になってねぇし、少し形崩れたとこを直せば動くようにはなると思う」


「明楽さんなんでそんな詳しいんですか…?」


「昔知人に教わっただけ」



そういうと明楽は立ち上がり、黒髪の少女に話を始める。



「ところでさ、お前らこの3日間衣食住とかねぇだろ?」


「その点は大丈夫だよ」


「お前は大丈夫なんだろうけど、弟とチビはそういう訳には行かねぇだろ」


「俺らのことh」



グゥ〜〜〜



「……あ」


「お腹空いてたんだね、いいよ!美味しいところ紹介してあげるよ!!ここには美味しい定食屋があるんだ〜✨」


「ほんとなの?」


「うん!」


「ぼくもおにゃかすいた!!早くそのていしょくにゃってとこに行くんだぞい!」


「賛成」


「2人とも…( ̄▽ ̄;)」



少女と女の子が定食屋に食い気味なので少年はやれやれとした表情を見せる。



「おい犬っころ助手、お前犬っころを心配させてるわけだからまず俺の家に戻れ」


「oh......」


「お前らも一応ついてこい、せまっちぃとこだけど当分世話してやるよ」


「ほんと?」


「ありがとうございます!」


「( *°∀°* )」


「んじゃさっさと帰るぞ…あー、遅刻しちまうけど…まぁいっか…」



とぶつぶつ言いながら家へと帰路を辿る明楽。

それに着いてく黒髪姉弟と海璃。



「あっ、目が…っ」


「あ、ごみ入っちゃった?ちょっと見せて?」


「え、あっちょ…!、やめ…っ!」



海璃は少年の左眼を隠している髪を退ける。

その時海璃は手の動きを止め、思わず固まってしまった。



………少年の左眼は、赤く光る黒い瞳をしていたから。




……To Be Continued.

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