第4話「今更謝られましても」




「我が国は花の女神フローラ様を信仰しています。

 故に花言葉はとても重い意味を持つのです」


それを「たかが花言葉」ですって?


「女神の信仰なんて古臭いし形だけのものだと思っていた。

 花言葉の意味を尊重しているのなんて年寄りぐらいだろ?」


信じられません。女神フローラ様を侮辱するような発言をするなんて!


これは妹とエドワード様の婚約も白紙に戻した方が良いかもしれませんね。


このように信仰心の薄い方とディアを結婚させられませんわ。


「まさか本当にご存知なかったのですか?

 花言葉を覚えるのは女神フローラ様を信仰するこの国の貴族のマナーですわ」


「済まなかった!

 これからは花言葉を覚えるよ!

 シアに『愛してる』という花言葉を持つ花を贈る!

 だから僕ともう一度婚約してくれ!」


エドワード様がおもむろに立ち上がり私の手を掴んだ。


「きゃぁっ!」


突然のことに、私は悲鳴を上げてしまった。 


「わかってくれ、シア!

 君を心から愛してる!」


「離して下さい!」


エドワード様が私の手を引っ張り抱き寄せた。


エドワード様の胸が私の目の前にある。こんなふうに女性を乱暴に扱う方だとは思いませんでしたわ。


「嫌っ! 離して!」


私はエドワード様の頬を叩いた。


頬を叩かれたエドワード様が愕然とした表情で私を見下ろしている。


「どうしてシアは僕の気持ちを分かってくれないんだ!

 君が僕の思いを受け入れないというなら………仕方ない!

 実力行使だ!」


エドワード様の目つきが変わる。濁った目で見つめられ寒気がした。


「シア……僕の気持ちを受け入れてくれ……!」


エドワード様にあごを掴まれ無理やり上を向かされる。直後エドワード様のお顔が近づいてきた。


「やっ……!」


このままではエドワード様に唇を奪われてしまう……!


絶体絶命のそのとき……。

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