第6話 紅の重慶戦線

予定時刻、第1小隊は日本海側へと進出し輸送用の海軍の軽空母に艦載された。艦は最大戦速で上海港へと急行し第1小隊はそこで長距離航行用増加スラスターユニットを背部に装着した。

そして3時間をかけて重慶戦線に到達した。


〜重慶戦線総司令部〜

「あなた達が今日付でここに配属された部隊ですか。」

そこの総司令は少し痩せ気味であったが体のあちこちに傷跡が残っていた。階級は大佐であったが物腰はとても柔らかかった。

「はい、我々は特務軍第32戦術遊撃中隊第1小隊であります!」

「ほう、特務か。なら早速命令を下そう。後1時間後に敵がこの戦線に大量に集結するといった情報を傍受した。その集結地点を奇襲し混乱状態にしてほしい。」

なかなかに過酷な任務であった。混乱状態にするには指揮系統を寸断し、退路を遮断し、補給物資を破壊などやることだらけ。なおかつ対空砲火にも晒されるわけである。それをほぼ全員が新兵の状態で行うのだ。


そこで、矢島はすかさず質問した。

「大佐、意見具申。」

「許可する。」

「我々のほとんどは新兵で構成されています。これは死んでこいと言うようなものである!」

「確かにそうだ。」

「では何故この作戦を思いついた。」

「貴様らがどうであろうと知ったことではない、これが大本営の意向だ。だがいつ迄も新兵のままでは困る、その点では私も同じだ。いいか少佐、任務は失敗しても構わん。尻拭いなら俺がやる。その代わり全員を生かして帰投しろ。これでいいか?」

矢島は大佐の覚悟が並々ならぬものを感じた。

その迫力に飲まれたまま作戦を受領した。


「小隊長、我々の装備は何にすれば良いのでしょうか?」

作戦は混乱を招く目的が主である。そのためには迫力と威力が必要である。

「戦龍機専用のランチャーとかあるか?」

「はい、ロケットランチャーと対艦砲撃用ユニットのセットがあります。」

対艦砲撃用ユニットは背部アタッチメントに取り付けて軍艦に砲撃すると言ったものだ。排熱時の噴射煙で反動は相殺している。

ロケットランチャーは弾速こそ遅いものの破壊力は戦車を一気に3両程度なら吹き飛ばせる。

「いや、やめよう。ロケットランチャーも砲撃ユニットも重すぎる。」

対艦砲撃用ユニットとロケットランチャーの弱点はその重量にあった。そのため、第1小隊は結局装備を標準の高機動スラスターユニットと、炸裂弾を装填した65式40㎜速射式狙撃銃と61式20㎜高速発射式短機関銃、55式13m対艦刀を装備した。作戦開始時刻は夜2300となっていた。


〜2300 作戦開始時刻〜

「全機、発進準備は完了したな?今回は最悪任務を放棄してでも構わん、帰還を優先しろ。分かったな!?」

『了解!』

そして青白いスラスターの光で辺りを照らしながら目標地点へと飛び立っていった。


数分後、目標地点より少し離れた上空にいた。

『隊長、狙撃可能距離に到達しましたが雲がかかっていて狙えません!』

「気象情報はどうなっている。」

『今日はずっと雲がかかりっぱなしだそうです。低高度まで行きましょう。』

渋々、低高度まで降りた。

そこには無数の対空戦車と高角砲陣地が待ち構えていた。そう、ドイツ軍は集結を完了していたのであった。


「よし、日本軍は我々の流した偽情報に引っかかったぞ!撃ち落とせ!」

ドイツの誇る対空陣地は低高度にいる日本軍に過剰ともいえる対空弾幕を浴びせた。


「くそっ、もう集結していたのかよ!」

『小隊長、指揮所と思われる施設を確認!』

データがリンクされた。それは対空兵装が多くある場所だった。

「よし、でかした!俺が囮になる。お前らは回避運動をしつつチャンスがあればそこを狙撃しろ!」

そう言い残して矢島は敵陣深くに切り込んだ。

レーダーを見ると後ろから味方機の青光点が続いてくる。

「馬鹿者!回避優先といったろう!」

『回避するより突っ込んだ方がまだマシだって俺たちは俺たちなりに考えたんだ!』

そう言いながらどんどんライフルで建物を壊しつつ、機関銃で対空砲を破壊していった。


しばらくして、何機かは既に弾切れとなり対艦刀を握っている状態であった。片腕が吹き飛んだ機体もあった。矢島の機体も弾を節約していたが遂に弾切れを起こした。

更に続いて赤光点が急速接近してきた。

ドイツの戦龍機部隊だ。数は30。これにより対空砲火は止まったが劣勢も劣勢だ。いくらこっちは最新鋭機とはいえ数で押し切られてしまう。それでもまだ混乱状態とは言い切れなかった。

「仕方ねぇ、作戦続行可能な機体は射撃戦を中止し近接戦を開始しろ。」

背部に懸架していた対艦刀を手に取る。流石に片腕吹き飛んだ奴は帰投すると思ったが15機とも対艦刀を抜き放って直立していた。

「全く、どいつもこいつも大馬鹿野郎だ。帰ったら俺の奢りで飲みまくるぞ!」

『了解!』

スラスターを全開にして敵機に群れに突っ込んでいった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鉄翼を持ちし竜の争う世界〜3度目の異世界転生〜 トンカッチ @tonkacchi7808

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ