第5話 実戦演習
矢島と能登の55式はすぐに空高くまで上がり高度優位を獲った。その6分後に紫電隊が上昇を試みた。
「能登、一番最初に上がってきたやつからスナイプして落とせ。ライフル、持ってきたろ?」
「もちろんです。任せてください。」
神眼はまだ1日に5回までしか使えない。今日はそのうち3回を使って紫電3機を撃ち落とす。
音源と発砲煙が出ないように施された特殊マズルを装備した55式長銃身遠距離狙撃銃は1機目のコックピットに真っ赤なペイント弾で染めた。
「くそっ、開始早々3番機がやられたのかよ!」
「散開しろ、急げ!指揮系統は俺が継ぐ!」
「了解した、フォーメーションをデルタフォーメーションに移行せよ!」
「りょうか・・・、上がりすぎるな13番機!」
「この高機動機を捕まえられるわけない!」
しかし、高く上がっても低くいても神眼の前では無力となる。思考の先をゆくのだから。
13番機もコックピットに命中させられた。
「畜生、能登少尉の戦龍機は何処にいるんだ!」
「囚われるな!矢島少佐の戦龍機も何処かにいるんだろ?だったらそろそろ仕掛けてくる。」
その時、彼らの機体のレーダーに赤光点がゼロ距離に来ていることを示した。その後、格闘兵装によるキル判定が表示された。
「隊長、ライフルは弾切れです。」
「よくやった。そいつに
「はい、近接戦に移行します!」
能登はスラスターを全開にして最前線に突貫した。
「よし、狙い通り来たな。各機、陣形を三段撃ち形態に移行しつつ退却!」
新兵たちはドクトリン通り一時退却と見せかけたカウンターアタックを狙った。
「よし、あの2機を引き離したぞ。射撃準備!」
重機関銃を各機がかまえる。
「目標をロックした!撃てぇ!」
25㎜の弾丸が2機に殺到する。
しかし、それらは命中したにも関わらずキル判定は一向に出なかった。
「くそっ、EMDSだ!」
気づくのが遅すぎたが故に至近距離まで接近を許してしまった。
「いくぞぉ、新兵ども!」
「前線組の恐怖、覚悟をしておけ!」
近接兵器による白兵戦が始まった。
新兵たちはEMDS改の使用を忘れていた。そのために近接攻撃を容易く受けてしまった。
乱戦から3分経ったところで新兵チームが全滅してしまった。それと同時に発煙信号が上がった。更に通信が入る。
「訓練中の全機、訓練は終了だ。ブリーフィングルームにてデブリーフィングを行う。パイロットスーツのままで構わないからあと15分で来い。」
そう米山が言った。
〜15分後 ブリーフィングルーム〜
「よし、全員揃ったな。じゃ後は君たちに任せる。」
そう言い米山は出て行った。
「よし、じゃあデブリーフィングを始める。」
矢島が仕切り始めた。しかし、
「詳しいことは能登少尉から聞こう。」
矢島は申し訳なさそうにこっちを見てきた。
仕方なくやることにしたが、小声で酒の奢りを約束させた。
「じゃあ俺から説明させてもらう。」
場の空気が一変した。
「まず最初だ。戦闘訓練だからといって甘えた上昇をお前らはした。だから撃ち落とされた。これについての改善点を誰か提示しろ。」
すぐに手が上がった。そのスナイプされたパイロットだった。
「私は垂直上昇をしました。さらに次の機体も変則軌道とはいえよくよく見ると分かりやすい垂直軌道でした。なのでEMDSを起動しつつ急上昇にて高度優位をとるべきだと思いました。」
完璧な回答だった。ドクトリンに影響はされきっていない。
「しかし、それを行えなかった。なんでかわかるか?それはお前らの実戦不足だからだ。死の恐怖を味わっていないからだ!」
更に部屋は重く静まった。
「それに伴いお前らはこれから隊を2つに分けてドイツとの最前線で戦闘参加する!」
つづけて矢島に紙を配らせる。
「明後日の明朝0415にこの基地を発進。矢島少佐の隊を第1小隊、俺の隊を第2小隊とし、第1小隊は友軍劣勢の重慶戦線へ、第2小隊はドイツの勢力下のパプア・ニューギニアのポートモレスビー海軍基地を海軍と共同で強襲する!」
『了解!』
そして全員に解散を命じた。
「能登、しばらく離れるな。うまくやっていけよ?」
「もちろんです。その前に今から呑みに行きましょうよ、少佐の奢りで。」
「まったく、しゃあないなぁ。」
しばしの別れを前に2人は夜遅くまで酒を飲み交わした。
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