第4話 実戦経験

先の戦闘の後、104戦龍小隊は戦龍機のメンテナンスも兼ねた戦闘報告をするために横須賀特務軍基地まで帰投した。

「104戦龍小隊、戦闘報告と戦龍機の整備のため帰投いたしました。」

矢島は椅子にどっしりと構えていた男に報告した。

「そうか、ご苦労だったな。」

彼は特務軍中将 米山 よねやま みつるであった。

「君たちには我々に足りない実戦経験をしてもらった。それで分かったことを報告してくれ。」

「はい。まず我々の問題からです。機体が既に旧式化しており敵機に食いつくのに一苦労しております。更に戦術にも問題があります。」

「何?戦闘ドクトリンがあるだろうが。」

「はい、それに問題があるのです。ドクトリンも旧時代のものです。今回はその抜け穴をつかれていました。」

矢島は続ける。

「戦龍機の一斉発進、これです。」

今回はこの時を敵機に狙われた格好となった。それにより味方は壊滅状態となったのだ。

「・・・わかった。ならば提案がある。」

「何でしょう、できることなら遂行します。」

「新しいドクトリンを君たちに作ってほしい。何年かかってもいい。後世にまで継がれる、笑い物にされないものである。」

能登が割り込む。

「中将、ふざけるのも大概にしていただきたい!あんな旧式で味方はしばらく戦わされる。俺たちもそうに違いない。現状、防衛線は各地で破綻しつつある。アメリカは一向に動かない。それなのに後世にも影響する教科書を作れってか!?」

「落ち着け、能登!」

部屋が一旦静まる。

「確かに君たちには無理を言っている。だから我々はそれ相応の物を提供するつもりだ。」

「と言いますと?」

米山は分厚い資料を渡した。それは全280ページにも及ぶ物資リストや計画、情報であった。

「これに書いてあるものは何でもくれてやる。それと別に特別に部隊を授ける。ついてこい。」

3人は10分ほど歩き倉庫まで行った。

そこには30人の特務軍兵士がいた。

「御三方に対しに敬礼!」

よくわからず敬礼されたのでとりあえず敬礼で返した。

「今日から君たち2人にはこの部隊を率いて動いてもらう。」

兵士の詳細リストが手渡された。

「君たちはこれより特務軍第32戦術遊撃中隊として行動をしてもらう!」

更に後ろの倉庫のシャッターが開く。

「そしてコイツが君たちが主に乗る機体だ!」

その戦龍機のツインアイが光る。

「これは65式汎用多機能戦龍機「紫電」だ。その資料に詳細が書いてある。」

ページをめくった。


65式汎用多機能戦龍機 「紫電」

全高・・・20.5m

重量・・・50t

標準武装・・・65式25㎜高速重機関銃

       腰部3連装ランチャー

       スモークディスチャージャー

特殊武装・・・EMDS改 ※電力消費量の削減と防御力の向上が図られている。

       試作型ハイパージャマー ※レーダーロックした目標の電子機器を30秒間使用不能にする。試作型の為、連続使用ができない。

機動力・・・55式より推力の大幅な改修が施されている。推進剤の変更により航続距離も増大している。

装甲・・・複合3層チタン・セラミック・ラミネート装甲


「まぁここまでされちまったらやるしかないのか、なぁ能登。」

「はい、やる気が湧いてきました!」

そして矢島は30人に向けて言う。

「いいかお前ら。俺たちは簡潔に言えばモルモットだ。新しいドクトリンを作るための部隊なんだ。だから色々な任務に着くだろう。そのほとんどは過酷に違いない。それでもついてくる覚悟があるものは一歩前へ!」

その時に、能登は中将に小声で質問していた。

「中将、紫電は何機あるんで?」

中将はにっこり笑顔で

「安心しろ、32機ある。その内30機に火を入れてある。」「了解です。」

会話している間に全員が一歩前に出ていた。

「隊長、いつでもいけます。」

「さすがだ、能登。」

そして今日一番の大声を張る。

「これより戦闘訓練を開始する。目標はこの基地上空にいる2機の55式戦龍機だ。撃墜できたものにはそれ相応の対価をくれてやる。撃墜されたらきついお仕置きが待っている。総員戦闘配置につけ!」

『了解!』

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