戦争

第2話 3回目の初陣

『鉄翼を持ちし竜の争う世界』

神託を聞いた時には全く想像ができなかった。しかし、実際に転生してみればそれは呆気ないものであった。

『鉄翼を持ちし竜』は二足歩行の戦闘用ロボットで、それが空を飛び回っていた。

『争う世界』はそのままの意味でこの世界線でも世界大戦が起きていた。

とりあえず、転生したばかりでは何もできない。まずは自分の状態と情報を確認することが大事だ。

周りの人たちに聞き回った結果、

・年代は西暦1965年

・能登 忍は22歳の日本軍の特務軍少尉

・日本は大日本帝国となったまま

・アメリカとは戦争はしていない

・ドイツ一強でソ連も手が出せていない

といったものであった。

元々の一般的な世界線よりもカオスである。

なぜならドイツにはまだアドルフ・ヒトラーが存命しているからだ。そして日本も日本でよくわからないことになっている。

日本の政治体制は特に何もないが、軍は陸軍、海軍、空軍、最後に特務軍である。

特務軍は先に述べた『鉄翼を持ちし竜』を主に運用する軍である。そして現状はドイツ軍がもうそろそろで到達しようとしていたところであった。そこで隣に浮いている『妖精』に話しかける。

「おい、リーシャ。お前いつから妖精になった?」

「能登様の支援を仰せつかっております。大丈夫です、みんなには見えませんから。」

リーシャが妖精となってサポートをするらしい。その時、

「おい、能登少尉!出撃準備だ、早くしろ!」

大柄な男が急ぎ足で言ってきた。どうやらドイツ軍はもう目の前らしい。

何があるかわからないので、ひとまず目の前の男についていった。そこには大型の鎧武者を思わせる機械が直立していた。その頭部のツインアイとロッドアンテナがより兜に思わせた。

「能登少尉、貴様の機はあっちだろうが!」

隣の機体には肩に02と書いてあった。急いでタラップを駆け上がりコックピットに入った。

「リーシャ、こいつは何かわかるか?」

「はい、データを出します!」

小型端末に情報が出てくる。


55式汎用機動戦龍機

全高・・・20m

重量・・・55t

使用可能兵装・・・日本軍、アメリカ軍の片手使用可能な兵装全て(一部の両手持ち兵装も可能)

機動力・・・戦龍機としては平均的

装甲・・・複合3層チタン・ラミネート装甲

特殊装備・・・EMDS(excessive mobile defense system:過剰な機動防御システム)

発動時に機体バッテリーを大量消費する。そのかわりに装甲に電力を流し、装甲材を電磁装甲に強化する。


「なるほどねぇ。こいつは日本の汎用機ってわけだな。案外モデル体型な体で腕と足が細いんだな。この手に持ってる武器はなんだ?」

「これは55式軽機関砲で口径20mmで弾数はフルで30発です。結構撃ちきりやすいので注意してください。」

「だから、コイツの腰にマガジンが多くあるんだな。それが両手持ちか。FCS(fire control system:火器管制システム)はお前に任せればいいのか?」

「それは機体が勝手にやってくれます。私は戦術サポートとして動きますので。それよりも動かせそうですか?」

その問いと同時に機体のエンジンをかける。

「心配ご無用だ。スキルで手に取るようにわかる!」

腕を動かして倉庫横の55式軽機関銃を手に取り、背中のウエポンラックに引っ掛ける。

無線が同時に入る。

『能登少尉、準備はいいな?もう目の前にドイツの戦龍機も多数確認している。我々の方が練度が高いことを見せつけてやれ!』

「了解であります。それと一つ言っておくことがあります。」

『どうした?』

「自分は記憶障害にあったようです。なので今の今までの記憶がありません。貴方のことは何とお呼びすればいいのですか?」

『・・・・何も覚えていないんだな。分かった。俺は矢島 若森やじま わかもりだ。特務軍少佐だ。俺らの隊、104戦龍小隊の隊長だ。詳しいことは帰ってからだ。戦えるんだな?』

「はい、矢島隊長!」

『よろしい、104小隊出撃!』

格納庫の扉が開いた。戦龍機発進エリアまで移動する。そこからでないと生身の人間が火炙りになるからだ。そして発進エリアに到達する。これが3回目の初陣だ。毎回どのような状況下であっても初陣は緊張する。

『1041矢島、出る!』

矢島機が垂直にスラスターを吹かして空に飛んだ。これに続く。

「俺は確か02だったから、1042能登、出撃します!」

同じく垂直に飛んだ。

下にはまだまだたくさんの戦龍機がいた。他の特務軍の戦龍機小隊なのだろう。そう思った途端、コックピットが真っ赤に照らされ、アラームが鳴り響く。ディスプレイには『warning』と大きく書かれていた。

『能登、急上昇しろ!』

言われるがままに上昇した。すると、ついさっきまでいた場所に白煙が通り過ぎていった。

そしてそれらは地上へと向かっていった。

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