鉄翼を持ちし竜の争う世界〜3度目の異世界転生〜

トンカッチ

転生

第1話 転生

1944年夏、能登忍のと しのぶは2度目となる異世界ライフを送っていた。場所は激戦地の硫黄島。もちろん陣営は日本軍。

「おい、能登一等兵!何をボケーっと立っている!死にたいのか!?」

「申し訳ございません、軍曹!」

配置された場所は海岸から比較的海岸から離れた洞窟陣地だった。ここから延々と機関銃による掃射を繰り返していた。しかし、流石アメリカ軍と言ったところだ。海からの軍艦からの砲撃は苛烈を極めた。隣の陣地は砲撃により原型をとどめていなかった。

「軍曹、意見具申願います!」

「なんだぁ!」

「ここは陣地を放棄して摺鉢山頂上まで後退をするべきであります!」

それを遮るように軍曹の鉄拳が飛んでくる。

「馬鹿者ぉ!ここは我らが天皇陛下が直々に守られるようにと仰られている島だ。そんな撤退という弱腰では陛下に申し訳が立たんだろうが!えぇ!?」

しかし、ここにある重機関銃の弾はもうすぐで無くなってしまう。ここでこの軍曹を殺してしまおうか、そう思い腰のホルスターに収めた拳銃を引き抜こうとした。

その瞬間、あたり一帯が熱と煙に包まれた。

「ぐわぁ!・・・な、何があったんだ?」

前に立っていた軍曹が奥まで吹き飛ばされていた。どうやら生きてはいるようだ。しかし、腹に大きな破片が刺さっていた。

「・・・おい、能登一等兵。こっちに来い。」

その声はひどく弱かった。

「この日章旗を摺鉢山の頂上に打ち立てろ。これは俺からの頼みだ。・・・どうせ死ぬなら、高いところに立った日章旗を見たい。」

そうして軍曹は事切れた。

ついさっきまで殺そうと考えていたにも関わらず、今まさに彼の最後の頼みを受け入れている自分に呆れていた。それでも、死者の残す思いは大切なものである。そう思い山を登り始めた。


30分後、ようやく頂上に着いた。そこには日本軍の戦車が一両置いてあった。キャタピラが破損していたがまだ動きそうだ。能登は頂上に日章旗を立て、その戦車の中に入っていった。

慣れない手つきで戦車を動かしていった。下り坂を下るだけなのだ。動力はほとんど無意味だ。能登は覚悟を決めアクセルを踏んだ。そして斜面を高速で降りていった。


「生意気なジャップめ、俺たちの攻勢をことごとく阻んできおる。全軍、奴らをひねり潰せ!」

そのアメリカ軍将校の一声と同時に一気にアメリカ軍は攻勢に出た。どんどん日本軍は戦線を後退していく。その真っ只中に能登は突っ込んでいってしまったのだ。


「クソッタレ!こんなにアメリカ軍がいるなんて!」

予想を遥かに上回る兵士の数だった。そして銃口が自分の戦車に向けられる。銃口が光ったと同時に装甲を弾丸が貫通した。

「日本軍製は豆腐装甲ってのはマジなのかよ!」

どんどん弾を受けていき、速度が落ちてきた。

そして遂に、動かなくなってしまった。

「なんで動かねぇんだよ!このポンコツが!」

横に置いておいたライフルを持ち外に出た。なんとか応戦していたが弾が無くなってしまった。

「・・・もう、終わりなのかよ。」

絶望を知覚する前に激しい痛みが体を襲った。それは瞬く間に全身からも発せられた。

そしてその全てを感じる前に能登は死んでしまった。回り込んでいたアメリカ兵に蜂の巣にされたのだ。





「・・・・・・・・・さい。」

「・・・・・・起きなさい。」

何かに呼ばれて深い暗闇の中で能登は何とか目を開こうとした。そこには何もなかった。ただ暗闇ではなく光が広がっていた。

「ああ、俺また死んだのか。」

「はい、その通りです、能登 忍。」

目の前に女神のような神々しさを纏った女性が現れた。彼女の名はリーシャ。本人曰く創造主とかいう一番偉い神様の忠実なる化身らしい。

「やはり、『操縦』だけでは不遇でしたね。」

転生時に貰えるスキルが今回はいろいろな乗り物に乗れる『操縦』だったのだ。転生先はわからないが大概の転生先で有用らしい。

しかし、能登は運が悪かった。転生先は1944年。つまり、太平洋戦争後期で乗り物などほとんどなくなっていた時代だったのだ。

「んで、また異世界送りか?」

「はい。」

1回目の転生は何もなさすぎた。只のサラリーマンとして死んでいったつまらないものだった。2回目は戦争真っ只中。3回目があるのならマシにして欲しいものだ。

「能登よ、あなたに創造主からの神託を告げる!」

そして1枚の紙が降ってくる。まぁ、この演出も3回目なのだが。しかし、今までと違いそこには事細かに色々な情報が書かれていた。

『能登 忍(以下、甲)は創造主とその化身(以下、乙)より神託を今この文章により下される。


神託:甲は詳細にある乙の指定した世界線に転生する。その世界線にて甲は成すべき事を見つけ、達成せよ。以下はその詳細と対価についてである。


詳細:甲は世界線199番

『鉄翼を持ちし竜の争う世界』

にて乙の支援のもと成すべき事を達成する。


対価:万物における権限   創造主より』


「という事です。理解できましたか?」

「スケールが今までとは全く違うな。」

「はい。これまでの転生において実は貴方は数多くの善行と功績を残していたんです。その累積がここに現れたという形です。」

そして、お決まりのスキル選択が始まった。

「今回はスキルが3つまで選べますわ。」

選択肢はランダムではあるがたくさんあった。その中から好きに選べるのだ。

「よし、今回はいいのしかない!」

1つ目のスキルはパッシブスキル『操縦AA+』だった。

これは2回目の時より格段とパワーアップしたAA +となっている。操縦技術が神の領域に近いものになっている。

2つ目はパッシブスキル『人脈B+』だ。自分の助けになる人脈作りが容易になるスキルだ。1度目はこれによく助けられた。

最後に選んだのはアクティブスキル『神眼E』だ。初めて選択したため能力はまだ弱めだ。しかし、内容は非常に強力であった。回数制限付きで使用後に激しい目眩と頭痛が発生する代わりに対象の動きを先読みできるといったものだった。


「3つスキルを選ばれましたね。・・・あら、今回は変わったものを選ばれましたの?」

どうやら神眼は珍しいらしい。デメリットが大きいのが原因だろう。

「ああ、まぁ何でもいいから転生させるなら早くしてくれ。」

「分かりました。では、主のご加護があらんことを。」


能登 忍、3度目の異世界転生が始まった。

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