第3話 拒絶

「一緒に?」

「うん! ルズと一緒に行きたい。」

蒼空はルズの手を掴みながら微笑んだ。



「きっと楽しいよ?」

「一緒……?だめっ!いや! 怖い」


「一緒」という言葉に反応するように、ルズは手を振り払うと小屋の隅に座り込んでしまった。



(あっ……私、また空気読めてないのかな)

蒼空はまた何か言ったのだと、慌てるようにルズに近づいた。


「ごめん……ルズとなら楽しそうだなって思ったから、つい。悪気があった訳じゃないの。1人で行くから。」

「……」


「ルズ?」

「誰とも…仲良くしたく……ない」

ルズは近づいてきた蒼空を睨みつけた。目には黒い光が宿り、小屋がバキバキと嫌な音を立てていく。



「あなたも言ってた。……裏切られたのに、また誰かと仲良くしようとする意味が……分からない」

「それは」

ルズは話も聞きたくないと強く耳を塞ぎ込む。



「もう、嫌なのっ!!」

「っ……」

次第に黒い光は増していき、視界を埋めつくしながら蒼空の意識を塗りつぶす。


「ルズ……」



「……はぁ……は……」

暫くしてルズが正気を戻した時には、もたれかかるように蒼空が気を失っていた。


「……また、やっちゃった。」

ボソッと呟きながら、蒼空を引きずるように海の方へ向かっていく。本当は仲良くても……今の彼女の記憶にはいい記憶なんてない。



海辺に寝かせ、小さな落ち葉を両手いっぱいになるように拾っていく。落とさないように、ほつれないように。



海まで運ぶとその落ち葉を沢山浮かべてその上に蒼空をそっと乗せた。後悔しても仕方ないと、蒼空の手を弱々しく握りしめる。



ルズは、1枚の葉っぱに願いを吹き込んだ。

「どうか……彼女が幸せになれますように。私なんかに会わなくても…幸せに生きていける場所へ連れて行ってあげて」


落ち葉はそれを聞き入れるかのように、海の奥へと彼女を連れて行く。ルズは、その様子をじっと見つめていた。

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異世界探索記 〜魔女の子と友達になるべくこの世界を渡り歩く!〜 大井 芽茜 @oimeamea

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