終わりの話

終わりの話

私は本を閉じると、一息ついた。これで、この話も良い結末を迎えることができた。これで、良い。私の役割は終わった。私は、さっきまで読んでいた本を本棚に戻す。

「後悔はないか。」

あの時の声が私の頭に響いてくる。

「ええ、私は、これが最善の選択だと思っている。いや、最善の選択だと確信している。」

「そうか。それなら…」

そんな声が聞こえると、急に目の前が、いきなり靄がかかったみたいにだんだんと白くなっていった。

「次は後悔をしないように…」

そんな声が遠くに聞こえながら、私は意識を失った。


目を開けると、ぼやけた誰かの顔が見える。だんだんはっきりと見えてくると、それは親友と大学の友達だった。一瞬、誰だか分らなかった。そうか、私は、変えることができたのか。私が、意識を取り戻したことがわかると、二人はすぐに私の両親と病院の先生を呼んだ。両親は泣きながら私のことを抱きしめてくれた。私は、事故にあって意識が戻らないまま、一週間経っていたことを後から聞いた。

―1か月後―

今日は、退院の日だ。意識を戻してから、私のもとに、とにかくたくさんの人がお見舞いに来てくれた。大学の友達の中には、あの時私をいじめていたグループのメンバーとリーダーもいた。心配かけさせるなよと泣きながら怒られた。そっか、私ってこんなに幸せだったのか。変える前はどうだったのだろうか。親友とけんかして高校ではだれとも話さないまま卒業したけど、周りを見たら友達ができたのだろうか。大学でも…。変えなければ起こった未来もあったのか。私がただ周りのことを信じていないだけだったのか。たくさんの疑問、考えが、入院している間寝る前の私の頭に流れてきた。でも、今は、今のこの世界を生きるしか選択はない。私はあの時、頭に響く声に対して、自分の選択は最善だと確信していると言った。それが本当なのかは、もうわからない。自信がなくなってきた。退院する前にもずっとぐるぐると考えていると、

「何そんな難しい顔しているの!退院でしょ!みんな外で待っているよ。」

そう言って笑いながら、親友は私のことを引っ張っていった。

「ね、私は、君が生きてくれていてうれしいよ。事故にあったって聞いた時、私本当に心臓が止まるかと思ったんだから。君の大学の友達、いるでしょ?あの子も私と同じことを思っていたよ。」

私は、その言葉を聞いて涙がぼろぼろと出てきた。私、生きていても良いのかな。自分のために、未来を変えた。それは許されないことなのかもしれない。それでも…。

「え!?なんで泣いているの?」

親友が驚いて私の顔を覗き込んだ。

「んーん、何でもない!ありがと!よし、みんなのところに行くかー」

そう言って私は、逆に親友のことを引っ張って外へと向かった。たとえこの選択が間違っていたとしても、私はあの時、この選択をしてよかった、将来そう思えるように充実した毎日を生きようと思った。友達と、親友と一緒に。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る