7. 威
「きゃあああああ――!」
なんで、私は下へと吸い込まれているのだろう。通気口だったはずなのに。横に進めたはずなのに。刹那の時に、やたらと思考は情報量を多く含んでいた。
もう意識が飛んでしまうんじゃないかと感じたら。
私は床に落ちた。
「っつ、痛……くもない…………?」
変なの。長いこと落下していた気がするのに。……まあ、この支離滅裂な空間じゃあ、何でもアリなのかも。
ゆっくりと周りを眺め回す。
本棚が、密集している。しかも、一定の向きに並んでいるようではなさそう。近かれ遠かれ四方に本棚があり、見えている面もバラバラなのである。
「まるで、迷路みたい」
――大体一分後、私は、己のこのつぶやきに後悔したのだった。だって、本当に迷路になっていたから。
そしてさらに五分後。
「はあ、早く帰りたいのに――って、え、何、何これ、うわっ、怖」
私の目の前で、一冊の本がガタガタ揺れて落ちてきたのだ。
戻してあげよう――と、その本を拾い上げようとすると、
――ちょっと! わたくしのことを無視するつもり? 大層度胸のいい小娘ですこと!
籠もった音の声が聞こえた。この世界に迷い込む直前に聞いたあの幼い声とは違って、高飛車な女性のような声だった。
「……?」
何だろ、と本を開く。
『ぷはあっ! やっと外の空気に触れられましたわ。久しぶりにニンゲンがここに来たから、助かりましたわ』
切り絵の女性が喋っていた。本を開いたからだろうか、クリアに聞こえるようになった。
『どうしましたの? ……ああ、わたくしが話しているから驚愕しているのかしら。可哀想に』
……勝手に
「あの、あなたは」
『ん? ああ、名乗っておりませんでしたね、わたくしはグリムヒルド。――ああ、いいのよ! あなたなんぞは名乗らなくたって。女王たるもの、庶民には興味なんてないですもの』
腹立つなぁ、この人。でも、いっそへりくだってしまえば、そのキャラクターに徹して楽になれるかも。
私は意を決して口を開く。
「――女王、一つお尋ねしたいのですが」
『何かしら』
「単刀直入に言いますと私は、ここを出たいのです」
『ふぅん? で?』
とても高圧的。けれど怯んではならない。こっちが脅えてしまえばそれは、隙を作ることになってしまうから。
「女王は、何かご存知でしょうか。この迷路を抜ける方法を」
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