5. 探

「嫌だなぁ、見えづらいんだけど」

 ぶつくさ言いながらも、手を伸ばしてアンテナにしつつ進む。

「あ」

 指先が何かに触れる。木だ。

「本棚とか? まぁ図書館だしね……」

 指を滑らせて辿り着いた一冊を、無理やり取り出した。ぎっしりと詰められていたようで、少し苦労する。

 本を開き、顔をくっつけるようにしてみると、古い紙独特の匂いが香る。これ、開架の本ではなくない? 流石に館内でこんなのは見たことがない。

 文字にそっと触れると、僅かな凹凸を感じる。――あ、これ、活版印刷だ。ということは、やっぱり古いやつ。

 他の本も取り出し、同様に確認する。読めはしないなりに、結構な情報が得られるものだった。

 ここ、きっと開架じゃない……でも、本はたくさんある。つまり。

「閉架書庫…………?」

 そんな考察をしたって、この不可解な状況はどうしようもないけれど。

 そう思って、本棚を離れようとしたとき。

 バサバサバサッ。

「え……」

 背後で、恐らく本が雪崩れたようだ。

 なんで。私、触ってないのに。

 にわかに背筋が凍り付く。

 嫌だ。とてつもなく、嫌だ。怖い。吐き気がする。

 一瞬、私は硬直してしまった。けれど、立ち止まっているとそれはそれで気分が悪い。その場を去ろうとすると、ある棚の側面に室内図が貼ってあったのを見つけた。本の活字よりはフォントサイズが大きく、またくっきりと太字で印刷されていたので、先ほどとは違い、文字が読めた。

 それによれば、ここは〔8類 言語〕の書庫のようだった。棚の配置と、そしてスタッフルームの位置が記されている。

 あ。スタッフルームになら、何かあるんじゃない!?

 それに――望みは薄いけど、閑散としたこの室内よりかは、人がいる気がしたのだ。

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