3. 誘

 寝起きの頭で過去のことを思い出していたら、いつの間にか出入口には辿り着いていた。

 ああ、私は閉館アナウンスを聞くのが怖くて、必ず放送されるよりも前に帰るようにしていたのに。まったくもう、寝落ちてしまうなんて!

 ドアノブを手で握る。

 ぐるっと手首を回す。

 ぐっと前に扉を押す。

 ここまでは、何も問題はなかった。そう。ここまでは。

 何かに引っ張られる。

 後ろへと倒れていく。

 視界に靄がかかり、暗くなり、耳元で誰かがささやく。


 ――みーつけたっ!!

 

 意識は消えていった。

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