本当にあった怖い話 3
真っ暗で電気のついてない朝鮮トンネルの中はね、舗装されてなくって、ジャリジャリって踏み進めると砂利の音がするんだよね。そのジャリジャリって音が、どこが出口なのか、そして、出口は本当にあるのもわからないような、明かりひとつない真っ暗闇の中で響くんだって。それも、人数分の足音が、ジャリジャリって。
トンネルの中は外とは違って、ものすごく冷えていて、それに所々からぴちゃん、ぴちゃん、って水が落ちる音がするらしくてさ。ぴちゃん、ぴちゃん、って、その音も響くの。で、お馬鹿な若者たちはビデオカメラをまわしながら最初こそ、きゃあきゃあ言いながら進んでたんだけど、だんだんその声も誰ともなく発しなくなっちゃって。私が思うに、きっとみんな怖いけど最初に怖いって言いにくくって、無言になっていったんだと思うんだよね。
もしくは、声が出せない状況だったのか。
それにトンネルは今あるようなトンネルじゃなくって、ちょっとぐにゃっと曲がったり天井が低い部分があったりしてさ、カメラの小さなライトはついてるけど、それ以外のライトなんて持って来てなくて。そりゃそうだよね。まさかトンネルの中に入るなんて思ってもみないんだから。
で、どうなったのかって?
うん、みんなでくっつきながら進んでいくと、微かに陽の光が見える場所まで行けたみたいでね。その光を目指してみんなで進んだんだけど、どうやらそれはトンネルから二股に分かれた小さな穴だったみたいで。そう、出口じゃなかったんだよ。と、その時だよ。その穴に目を当てて外の景色を見ていた若者が、今誰か通ったとか言い出して。まさか、そんな山奥のそんな場所に誰かいるわけないってみんなが言ったんだけど、確かに見たって。確かに、白い着物のようなものを着た女の人を見たって。
もうそうなるとダメだよね。全員パニックだよ。変なドラッグきめてるからなのか、バットトリップしてるみたいになっちゃって、我先にトンネルから出ようと走り出したわけ。そりゃさ、ただでさえ車がすれ違うのがギリギリくらいのトンネルじゃん? みんなで一斉に走り出したらさ、転ぶやつも出てくるわけよ。きゃあ! とか言って、置いてかないでぇとか言っちゃったりして。
で、パニックな若者達は走るんだけど、真っ暗闇の中、カメラについてる小さなライトだけが頼りだったし、どっちに向かって走ってるのか分かんなくなっちゃって。それで、あっちに走る奴、こっちに走る奴って出てきてね、みんなトンネルの中でバラバラになっちゃったんだって。もう恐怖すぎるよね。だって、真っ暗でさ、転んだら下は小石がいっぱいの舗装されてない道路だし、それに仲間の叫び声がトンネル内に響き渡ってるんだから。それにたまにぶつかる人影は、人間なのか、お化けなのかももう分かんないよね。だって、見えないんだから。
で、誰かがどっかのタイミングで出口を見つけたのか、叫んだんだって。出口にたどり着いたぞ! こっちだ! って。だから皆んなで急いでその声がする方に走るんだけど、それでも、ぶつかり合っちゃうし、どけどけ、俺が先だとかさ、人間性のわかるような暴言吐くやつもいたりして。その暴言に紛れてね、女の子の泣き声や叫び声がトンネル内に響き渡ってるの。ひどいよね。
で、みんなで出口にはたどり着けたんだよ。
みんな声のする方に走っていけばいいんだから。
でもね、それはさ、本物の出口だったんだよね。
本物っていうのは、入り口じゃないってこと。
で、何があったと思う?
そう、小さなダム湖につながっている細い獣道。
でもさ、恐怖に飲み込まれてしまってる女の子とかが、もうこんなのいいから帰ろうよとか言い出して。で、お前さき帰れよとか言われるんだけど、きた道ということはまたトンネルの中に入って行かなきゃいけないじゃん? もちろんそんなことは無理だよね。だから、その先に皆んなで進んでみたんだって。草を手で払い除けて、なんとなくついている道を進んで。そしたらさ、ダム湖に到着する前で、まさしく、ボケちゃったおばあちゃんの言っていたような開けた場所と祠を見つけてしまったんだよね。
うん、その通りだよ瑞希ちゃん。
本当にそこにあったんだよね。
誰にも手入れされていないのか、灰色に朽ち果てそうな小さな祠が、草がぼうぼう生えている開けた場所の真ん中に。きっと、近くの村の人も祠のことを忘れちゃったのかな。誰もお参りにも来てないような状況でさ。でも、それをいうなら、車の入れない道を進んで、そんな朝鮮トンネル抜けてまで、誰もこないよね。
若者たちは、探していたものを見つけたことが嬉しかったのか、やりぃ見つけたぜ、なんて言っちゃったりしてさ、その祠の周りを動画で撮ったりしてて。で、その中の誰かが中身も見てみようぜ、とかなんとか言っちゃって。
絶対ダメなやつじゃん?
そんなのって。
でも、開けちゃったんだよね。その祠の扉を。
中にお面はあったのかって? うん。あったんだよ。おばあちゃんはボケてても、言ってることは間違ってなかったんだよ。で、若者たちは、まじですげぇあったし、とかなんとか言っちゃって、嬉しそうにそのお面を中から出して自分の顔に当ててみたりしててさ。そのお面、本当に醜いお面でね。
能面ってあるでしょ? 翁の面とか、鬼の面とか、そういうやつ。うん、そうそう、能舞台でつけてるやつね。それみたいな感じの顔がベースだと思うんだけど、その顔は焼け爛れたように真っ黒で、そしてただれ落ちた皮膚を模造したような溝のような、模様のようなものがお面の全面に施されててね。所々にはボツボツと吹き出物のような突起物もあって。それはそれは恐ろしいお顔をしたお面だったの。
それからどうしたのかって?
うん。馬鹿な若者たちは、これを戦利品に持って帰ろうとかなんとか言っちゃって、どうやらそれを手に持って、来た道を戻っていったそうなんだよね。もう絶対ダメな感じしない? でしょう? やばいよね。
え? このお話はここまでかって?
まさか。
そこから先が、あるんだよ。
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