本当にあった怖い話 2

 で、今から行くかってなったんだけど、調べてみたらさすがに遠いからどうしようかってなって。そしたらたまたまそこに居たひとりがさ、イベントのフライヤーを出して来て、これ近くね? ってみんなに言ったんだって。その若者たちはさ、クラブとか、バリバリ踊りに行ってるような結構裕福な大学生でね、いいじゃん、それいくついでに見に行こうぜってなったんだって。しかもそのパーティがね、公にフライヤー出してるタイプじゃなくってさ、シークレットパーティーだったわけ。


 瑞希ちゃん行ったことある? あんまりない? そうか。外のパーティって楽しいんだよね。明け方に太陽が昇り始める前の感じとか、音楽に合わせて超盛り上がるし、キャンプファイヤーとかしたりしてさ。その木が燃える煙の香りとか、お香の香りとかを身体に纏わせて思いっきりダンスして一晩寝ずに明かすみたいな。え? 私? うん。結構好きで日本全国どこでも行っちゃう時もあったよ。最近は全然行かないけどね。無人島の砂浜でビーチパーティーした時は、海外の有名なDJがまわしててさ、ちょうど雨が降って来て、雷まで鳴って。ビカビカーって稲妻が走るのを見て雄叫びあげて、びしょ濡れで踊り続けるの。もう、何もかも吹っ飛んじゃうよ。あ、話がそれちゃった。ごめん、ごめん。


 そうそう、それで、そのシークレットパーティーというのはね、信頼できる仲間内だけのパーティなわけで。ゲストDJとかもビックネームじゃなくて、地元のクラブで回してるようなDJだったりするんだけど。


 もちろん、そこにいるメンバーはその日に合わせて、その祠とやらに行ってみようってことになったんだよね。パーティー自体は一泊二日のタイムテーブルで、みんなでテントとか持って。


 え? 富士山のところでやってる系のイメージ? ああ、そうそう。あれはロックフェスティバルだよね。うん、イメージ近いかも。私はどんなジャンルも行ってたけど、一番多かったのは、やっぱりトランスかなぁ。知ってる? あ、そうそう、今日流れてる音楽がそれだと思う。でもそんな富士山のフェスみたいなちゃんとした主催者さんじゃなくって、もっと小規模で本当に仲間内で主催してるような感じの、いい加減なパーティーだけどね。


 でさ、みんなで山奥のキャンプ場に向かって、シークレットパーティの会場について。とりあえずはテントとか、そういうのをセッティングしてから祠に行くことにしたんだって。そのキャンプ場から祠がある場所までは車で一時間もかからないし、って。もちろん、ビデオカメラも持っていったわけ。基本金持ち大学生で、乗ってる車も大きなRV車だし、何人か仲のいい女の子も連れてたみたいで、音楽を爆音で聴きながら山道もスイスイ進んで。


 その若者たちは、軽く合法なのか違法なのか知らないけれどドラッグみたいなものをきめてたらしくてね。だから、まともに探せそうにないんだけど。女の子たちときゃあきゃあ笑いながら、そのおばあちゃんから聞いたっていう祠の場所を探しに行ったんだって。馬鹿だよね。全く。で、みんなで探すんだけど、なかなか見つからなかったみたいで。そりゃそうだよねぇ。だって、頭がぶっ飛んでるのに、探せないって思うじゃん?


 ところが、来た道を戻ろうとしたら、一緒に行ってた女の子のひとりが、あそこ、あれ、そうじゃない? って獣道の先にある開けた場所を指差していったんだって。で、うっそ、まじであったじゃん、とかなんとか言っちゃって。その場所にみんなで行ったんだって。


 でもさ、それはまだ序章に過ぎなかったみたいで。


 なんと、その場所には何もなくってね、よく見ると道が続いていたんだって。そうそう、獣道。なんとなく、道になってるような。だから、その先に行ってみようってことになって。ビデオカメラを回してるから、それはそれは盛り上がって進んでいって。


 そしたら、何があったと思う?


 うん、なかなか怖そうな状況だよね。だって山奥の道進んで、さらにそこから先に行っちゃうなんて、しかも頭はドラッグでぶっ飛んでておかしいしさ。戻ってこれるのかって思っちゃうよね。うん、そうそう、その先にあったものだったよね。気になるよね。もう、瑞希ちゃん、怖い怖い言いながら、ものすごい食いついてくるね。こういう話、怖いけど好きなんですって? 


 ふふふ。じゃあ続き、話すね。


 で、その先にあったのはね、真っ暗な古びたトンネルだったんだって。ひぃ〜だよね。私ならその先なんかに絶対行かない。でも、後から調べて分かったんだけど、そのトンネル、かなりやばいトンネルで。


 瑞希ちゃん、ちょんトンって知ってる? 知らない? そうか、朝鮮トンネルの略なんだけどね。私はちょんトンって覚えてるんだけど。そのトンネル、その朝鮮トンネルだったんだよね。うん。なんでその名前がついたんだってことだよね。そう、その通り。昔、そのトンネルを掘る時に朝鮮人の人がひどい環境で掘らされたとか、そういうところからきているの。それに、ひどい話なんだけど、奴隷のように扱われたその人たちは、疲労して死んでしまうと、処理がめんどくさいからと言って、そのトンネルの壁の中に埋められたみたいでさ。ねぇ、めっちゃひどいよね。


 そして、怖い。


 そのトンネルは心霊スポットとしても有名で、でも、場所がわかりにくくってさ、あんまり誰も行かないようなそれこそあるかないか分かんない都市伝説みたいなトンネルだったみたいで。もちろん、車が入ってこれるような場所じゃないしね。なんか、元々はその先に集落があって、その先をずっと進んでいくと、小さなダム湖に到着するらしくてね。そのダム建設のためにだけ作ったみたいなトンネルだったんだって。だからお役目が終わった後は閉鎖というか、誰も使わなくなってしまってたらしくて。


 辺りは草もぼうぼうに生えているし、真夏の昼間だというのに、トンネルの出口は見えなくて真っ黒な穴だけがただ山肌に空いていたんだって。その穴の中に入れなくするような柵は錆びて朽ち果てて、手で触って揺すると、ぐらぐらっと崩れ落ちるような感じで。


 え? そこに進んでいったのかってことだよね?

 もちろん。

 馬鹿な若者は、ビデオカメラをまわしながら、そのトンネルに入っていったんだよ。


 

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