本当にあった怖い話 1
「あのね、昔々の話じゃなくて、ちょっと昔の話なんだけど。とある山奥に古くて小さな
それを聞いた若者たちが、面白がっちゃって。それでそこに行こうってことになったのね。都市伝説? ああ、そうそう、そういう類の話だよね。本当にあるかもわかんないもんね。でもね、結構信憑性の高い話だったんだって。なぜならば、その祠のある場所から一番近い村に住んでいた人が、その若者の中の誰かひとりのおじいちゃんだか、おばあちゃんだかで。痴呆症が始まっちゃって、街中に住んでいる息子夫婦のところへ村から引っ越して来たんだって。それで、その時一緒に住んでいた若者のひとりが、ちょっとボケちゃったおじいちゃんだか、おばあちゃんだかが話す、その話を聞いたんだって。なんか、その辺めんどくさいから、おばあちゃんってことにしておくね。
で、おばあちゃんの話によると、その祠の中には醜くて古い御面が祀られてて、それに近づく者、その祠を開けるものに祟りや災いをもたらすとか、なんだとか言っててね。でも、その祠のある辺りは結構いい場所で、元々村があったところらしくて、山奥なのに、開けた土地なの。だからおばあちゃんの住んでいた村の若者が、あそこに畑を作りたい、とか言ったのかな。祟りなんて迷信だから、そんな迷信のせいでいい土地が使えないなんて馬鹿馬鹿しいとかなんとか言っちゃって。
で、おばあちゃんがまだ若い娘だった頃、その村の男衆が何人かで祠に近づき、その祠をどっか別の場所に動かそうとしたの。今みたいな時代じゃないし、山奥の村だし、祠っていっても、木で作ったようなものが石の土台の上に乗ってるだけで、壊したり、移動したりなんて簡単なことだったんだと思う。え? すでにやばい雰囲気が漂ってくるって? でしょう? いつの時代も、そういう人っているんだよね。でも、まあ、山奥の中で暮らして行くには、そうやって開けた場所って貴重なのかもしれないよね。その人たちにも事情があったんだよ、きっと。
でね、その祠を動かすのは結構簡単にできちゃったんだけど、その中のひとりが、どうせなら祠の中身を見て、村に代々伝わる話が本当なのか試しちゃおうぜ、とかなんとかいっちゃって。
でしょ? それもうヤバすぎでしょ? でも、そういう人ってどこにでもいるんだって。あ、これいうの二回目かもだけど。あはは。だよね。どこにでもいるいる。
で、その祠に巻いてあるしめ縄をとっちゃって、開けれないように木の杭で止めてあったものを抜いちゃって、扉を開けて御神体を見たんだって。もう、その時点でアウトだよね。で、御神体として祀られていたものは、結局のところ、村に昔から伝わる古くて汚いお面だった。だからそこでやっぱり元どおりにしようってなれば良かったんだけど、こんな汚いものを祀るためにこんなにいい土地を諦めるのは馬鹿馬鹿しいなんていって。その祠があった場所から山道を入り、日当たりの良さそうなところに祠を移動したんだって。
もちろん、そのことを聞いた村の年配者は大激怒。
でも、それで何も祟りがなかったら、いいだけじゃないか。なんて最初に言い出した若者が言いのけて、確かに何も起きなきゃいいんだと、動かしに行った男衆もその話に賛同したの。
え? で、どうなったかって?
祟りっていうのはね、二種類あって、神様を怒らせちゃった場合と、霊魂、そうだな例えば、人の霊、水子の霊、先祖の霊や、動物霊とかだね。で、この小さな祠のなかに祀られていたのはどっちだったかというと、どうやら霊魂の方だったみたいで。なんでも、昔そこに住んでいた村の人たちの魂を鎮める意味合いとか、そういう類の物だったみたいで。
それはそれは恐ろしい祟りが起こったんだって。祟りっていうのはさ、よく怪談話であるような、生霊や邪気に憑かれる話とは訳が違って、本当に悲惨な目に遭っちゃうらしいんだよね。
うん。なんか、肌寒くなってくるよね。ただでさえ山奥の夜は冷えるしさ。そうそう、川の音も効果音としてはバッチリだしね。
で、そのちょっとボケたおばあちゃんが言うにはさ、まず、一人目は祠に行こうと言い出したやつから始まって、順番に一人ずつ不可解な死を遂げていったんだって。例えば、祠を動かそうと言った言い出しっぺはきこりの若者で、最初の犠牲者となった。うん、そうそう、最初の一人目から順番だからね。で、そのきこりの若者は、木を切り倒す時に倒れるわけもない自分の上に木が倒れて来て、顔が潰れ、見るも無残な死を遂げたとか。ひょえ〜だよね。本当、そう。で、次から次に祠を動かすことに関わった人たちが死んでいくんだけど。え? 全部で? 五人死んだとか。それも山奥の小さな村の働き手である男衆が五人って、村にとってはすごい痛手だよね。
え? 他の人はどんな風にって?
うん。そのボケたおばあちゃんが言うには、一人は山道を歩いているときに上から大きな岩が転げ落ちて来て、それもまた頭を直撃して、発見さえた時、もうその顔は、原型を留めてなかったらしいの。それだけじゃなく、祟られた人たちの中には気がふれて、自分の顔を囲炉裏に突っ込んで焼け死んだ人もいたそうなのね。うん、もう完全にやばいよね。
そう、気づいた? そのお面、醜い御面だったから、みんな醜い顔になって死んじゃったわけ。
もうこれはダメだと思った村の人たちは、村人総出でもう一度祠を元の位置に戻し、お経をあげたり、御供物をしたりと、必死になって祟りを鎮めてくれるようにお願いしたんだって。その村の人の中に、この話をしていたちょっとボケたおばあちゃんもいたという、まあ、そう言う話なんだけど。
で、その話をちょっとボケたおばあちゃんから聞いた若者がいるじゃん? うん。瑞希ちゃんの言う、その通り。その若者が友達にこの話をしてね、じゃあその祠、今から見に行こうぜってことになったんだって。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます