第4話 神ふみふみ
「高速足ふみふみ! 最大速度!」
僕は一気に加速して、ゴーレムに踏みつぶされかけているマリーナを横から救い出した。
「ロディ…来てくれたのね、ありがとう」
うん、強引に救い出したから、マリーナの色々が僕に当たっているし、ぶっちゃけ密着しているがそんなこと言ってる場合じゃない。
「マリーナ! これはいったい? なんかゴーレムが凄いことになってる」
教会の入り口から、ゴーレムが大量に出てくる、尋常じゃない数だ。
どうやら勇者ワレイドが魔石を壊して、ゴーレムたちを解放してしまったらしい。
「ごめんねロディ、また巻き込んじゃったわたし。でも…あのゴーレムたちを城壁の中に入れちゃったら、王都の人たちが大変なことになるから」
マリーナは僕の腕の中で肩を震わせながら泣いていた。彼女の頭をそっと撫でながら、僕は言う。
「なら、ゴーレムを王都に入れないよう頑張らないとね」
ゆっくり頷くマリーナを抱えつつ、ゴレーム達に目を向ける。100体以上はいるな。すでに教会から出てきた一部は、王都の城壁へと向かいはじめている。
さてカッコいいこと言ったけども、どうしたものか。僕はマッサージや早く動くことはできても、戦闘に特化しているわけではない。
「ひぃいいいい、くるなぁああ!」
なんだか聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「あんたが魔石割るからこんなことになるのよ!」
僕らが教会の中に入ると、女神像の下で勇者ワレイドと賢者エレナが騒いでいる。数体のゴーレムに今にも押しつぶされそうだ。床から続々とゴーレムが湧き出てきていた。
「ホーリーシールド!」
マリーナが僕らの周りにシールドを展開して、勇者と賢者がぺちゃんこになるのをなんとか防ぐ。ただし、長くは持たないだろう。
「おお! マリーナでかした! さすがは俺様の聖女だぜ!」
急に元気になる勇者、さっきまで「ひぃいい」とか言ってなかった?
「む、追放ロディ! なにしてんだおまえ! 勇者ワレイドさまの聖女に近づくんじゃねぇよ!」
「だれがあなたの聖女ですか? さっき、見捨てようとしたのはどこの誰だったかしら」
聖女マリーナが死ぬほど冷たい声をワレイドになげかける。すでに額の血管がプチプチ言ってるのは見なかったことにしよう。
「い、いや~あれは逃げ…じゃない作戦だよ、作戦。そ、そんなことよりもどうすんだよ、この状況よぉ」
そうだ、なんとかしないといけない、このままじゃみんな潰される。
「よし! エレナ! おまえが攻撃魔法ぶっぱなしながら、退路を作れ! それまで俺たちはシールドの中にいようぜ! マリーナ! 」
「ふざけんな! クソ勇者! 賢者をなんだと思ってんのよ!」
「ワレイド! あなたそれでも勇者ですか! 最低です!」
ダメだ、今はケンカしている場合じゃない。
そうだ! 僕が高速でおとりになれば、みんなを助けることができるかもしれない。
「みんなはワレイドの言う通りシールドの中にいてくれ、僕がなんとかするよ」
僕の言葉に、ワレイドが立ち上がり僕の胸倉をつかんで言い放った。
「―――はあ? おまえに何ができるんだ! 臭い足をだすスキルでなんとかするとか、完全無理すじだろ!」
『ちょっと!! だれの足が臭いですって!!!』
教会の上から響いた大声に全員がビクっとして、振りむいた。
「「「「―――――――――女神像がなんかしゃべった!!!」」」」
『そりゃ喋るわよ! 女神なんですから!』
いや? どういうこと? もう意味がわからない。
『ロディ!』
「え? 僕?」
『なにをやってるの! あなたのスキルは女神の足なのよ! ゴーレムごときにアワアワしないの!』
え? 僕のスキルの足は女神さまの足だったってこと??
『【足ふみ】スキルを全開で使いなさい!』
なんだか良くわからないが、僕は下腹に力を入れて、全力でスキルを解放した。
「――――――【足ふみ】スキル! 神ふみふみ!」
あ、なんか自然と言ってしまった。そもそも神ふみふみってなんだ?
「ろ、ロディ…あれあれ!」
マリーナが僕の服のそでを引っ張って、空を指さした。
とてつもなく大きな足が天から、降りてくる。
「「でか!!!」」
ズーン!!!!!
プチ プチ プチ
凄まじい地鳴りと共に、教会にいたゴーレムはすべてぺしゃんこになった。
巨大な足は天に戻っていくと、再び地上に降りてくる。
ズーン ズーン ズーン ズーン ズーン
プチ プチ プチ プチ プチ
教会の外に出たゴーレムたちも次々と踏みつぶされてプチされていく。
「なにこれ…とんでもない足ふみだな…」
「ロディ! 凄いわ! ゴーレムたちも逃げて行くわ!」
マリーナが言うように、ゴレーム達は街道沿いに列をなして逃げ始めていた。天から降りてくる巨大な足ふみは、列をなしたゴーレムたちを次々とプチしていった。
「これはロディの力なの? あんた凄いじゃん」
「ああ、エレナも無事で良かった。 ところでワレイドは?」
エレナは黙って街道の方を指さした。あ、なんか勇者ぽいのが叫びながら逃げてる。どうやらワレイドはこのどさくさに紛れて逃げ出したようだ。
「ひぃいいいい、違う違う違う違う違う~俺は勇者だ~~~ゴーレムじゃねぇ~~~~」
ズーン ズーン ズーン ズーン ズーン プチ
「あ、勇者だっけ? あいつもついでにプチしちゃった。 てへ」
女神さまがやっちゃった的な顔で舌を出していた。
それから半日かけてゴーレムのプチプチを終えた女神は教会の女神像に戻っていった。
「凄いわロディ! 街道がきれいになってる!!」
列をなしたゴーレムをつぶしていった跡には、いい具合に押し固められたブロック状の街道が出来上がっていた。
ちなみに勇者ワレイドは、地面から掘り起こされてなんとか一命を取り留めたが、ゴーレム事件の罪を問われて王都の牢獄に入れられた。
「ねえ、ロディ。もう一度私とパーティ組まない?」
「あ、ロディ私も~いれて~」
聖女と賢者がぎゅうぎゅうと僕に抱き着いてくる。
「え? でも僕はマッサージぐらいしかできないよ。女神さまだってまた助けてくれとは限らないし…」
「「あのマッサージがいいのよ~はやく~~」」
こうして僕は聖女と賢者に両腕をつかまれて、宿屋に連れていかれるのであった。
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【読者のみなさまへ】
お読み頂きありがとうございます!
本作品はこの第4話でいったん1章完結です。
新作を公開しております。
「【万物創成コード】空から石が降ってくる外れスキルで隕石が降ってきたんだが? 剣聖じゃないと実家追放された僕は隕石以外も創成できるようです。王女と女神に溺愛されるので、戻って来いと言われても戻りません。」
https://kakuyomu.jp/works/16817139558990476108
よろしければこちらも読んで頂けると嬉しいです!
【足ふみスキル】足ふみするだけのスキルが無能と勇者パーティーを追放されたけど、僕の足ふみマッサージは女神の足ふみでした。聖女に溺愛されながら新しいメンバーを探しますので戻って来いとか知りません。 のすけ @nosuke2
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