第5話

   ***


 翌朝、目覚まし時計の音で目を覚ます。隣を見ると水月も一緒に起こしてしまったみたいで、まだ寝てていいよと頭を撫でた。

「…ん?」

 下に向かおうと外した視線を手元に戻す。そこにはやはり水月がいた—ただし、昨日とは明らかに違う姿で。

「えぇぇぇぇぇぇえええ!?」

 あまりの驚きに叫び声を上げる私のことなど構わず、当の本人はすやすやと二度寝に耽っていた。


「えーっと、水月ちゃん…なんだよね?」

 朝食の席にて。念のため確認すると、推定水月はうんと頷く。これでひとまず「推定」ではなくなったわけだ。それにしても…

「どういうこと?」

 当事者である水月は、少し居心地悪そうに伸びた髪をいじっている。そう、伸びたのだ。髪も、そして背丈も。今の水月は私より一つか二つ歳下なくらいの見た目をしている。

「そういえば、あの日熱中症で倒れそうになっていた時も朝のはもっと小さかったようなって思ってたんだよね」

「それじゃあもともとそういう体質なのかな」

「水月ちゃん、何かきっかけとか思い当たることはあるかい?」

「うーん…」

 水月は少し考え込む。

「あ、そうだ。澪ともっと一緒にいたいって思ったかも」

 私と?どういうことなんだろう。

「ふむ。澪ちゃんと一緒に、か…それが理由かはわからないなぁ。でも、もしよければうちの店で手伝いでもやってみるかい?今までよりも少しは一緒にいられるだろう」

「え、いいの!?」

 水月は顔を輝かせる。前からずっと、暇な時はお店の仕事を眺めてるって言ってたから余計に嬉しいんだろうな。

「本当はもっと一緒に過ごせる方法もあるんだろうけど、今すぐには難しいからね。これで我慢してね」

「そんな、嬉しいよありがとう!」

 ふふ、水月本当に嬉しそう。こういう、感情を言葉や表情で真っ直ぐに伝えられるところは水月の美点だと思う。

「じゃあ澪ちゃん、水月ちゃんに色々教えてあげてね」

「もちろん。水月、よろしくね」

「うん。頑張る!」

 こうして水月が私と一緒にお店の手伝いをするようになった。毎日私たちの仕事を見ていたからか物覚えがとても良くて、水月はすぐさま第二の看板娘になった。


 そんな毎日が続いた。あれから水月の体が大きく変化することはなくなって、私たちは徐々に新しい日常に慣れていった。

 そんなときだった。

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