第2話
キーンコーンカーンコーン
放課を告げるチャイムが鳴り、教室が騒がしくなる。私はお店の手伝いで部活はやっていないから、友達とは早々に別れて帰途に就く。
家に帰ると私はお店の制服に着替えて店番をする。かき氷を食べにくる子どもたち、冷たいお茶を飲みながら談笑する大人たちを眺めながら、お会計をしたり給仕をしたり。目まぐるしい時間。お店の中のお客さんが帰ってひと段落ついた頃には、空は橙色に染まり始めていた。
「あれ…?」
ふと窓の外、十歳くらいの女の子が一人で歩いているのが見えた。まだ外は昼と変わらない暑さのままなのに、汚れたワンピースだけを着て裸足でふらふらと歩いている。
「健二さん、ちょっと抜けるね!」
あれは危険だと思い、カウンターから出て正面から飛び出す。健二さんの戸惑う声に心の中で謝りながらも、私は女の子のところへ急ぐ。
「ねえ君、大丈夫?」
そう声をかけると、彼女は焦点の合わない目で私を見上げた。頭を触ると髪にひどく熱が篭ってしまっている。
「ごめん、ちょっと我慢してね」
そう声をかけて私はその子を抱き抱える。
「え…」
ふわりと香ったその香りに驚きながらも、微かにしがみついてくるその体をしっかりと抱きしめて、私はお店の中へと急いだ。
「健二さん、藍さん、飲み物と体冷やせるものちょうだい!」
お客さんがいないことをいいことに入り口から大声で叫んで女の子を連れて行く。二人は何事かと驚きながらも、大急ぎで保冷剤や飲み物を用意してくれる。クーラーの効いた部屋に寝かせ、保冷剤を当てて体を冷ます。うちわで仰ぎながら飲み物を飲ませると、しばらくして少し落ち着いた表情になった。
数分後、すぅすぅと寝息を立て始めたのを聞いて、私は傍を離れたのだった。
「それで、」
部屋から出た私に、待っていた二人が尋ねる。
「あの子は誰なの?」
「澪ちゃんの知り合いかい?」
「ううん、私も知らない子。だけど…」
「うん?」
「あの子、たぶん海の近くから来たの」
私は二人に朝の出来事を話した。人のいないはずの道に一人でいたこと、一瞬で消えてしまったこと、その時に濃い磯の匂いがしたこと…
「あの子を抱っこしたとき、その時と同じ匂いがしたんだ」
ここから海岸まではそう遠くないけど、子供の足で歩くには厳しすぎる。だけど、朝見た子はもう少し背が小さかった気がするんだよね…
とにかく、不可解なことがありすぎるから、とりあえず私たちで面倒を見て女の子が起きるのを待って話を聞いてみようということでまとまった。
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