第5話 自爆魔法
タタタン
また王の間に侵入して来たオーク兵をタナカが撃った。
「ちっ、ヤツらもうこんな所にまで入り込んで来やがったか!」
コロナが舌打ちをする。
どうやら既に魔王軍は城内の奥にまで侵入しているようだ。
「良いかコロナ、タナカ殿は“戦の女神”様から依頼を受けて勇者の血脈が途絶えぬよう、お前をここから逃がす為に異世界よりやって来たのだ」
父王がコロナにそう説明する。
「ちょ、女神もそんな面倒な事をすんのなら、勇者をよこせば良いじゃねーか!」
まあ、コロナの言うとおりである。
「たぶん
父王がため息をつく。
「で、こんな傭兵なんかを寄こしたのか?親父、俺は
「ゴチャゴチャ煩い」
バリッ
「ふぎゃっ」
田中はコロナのお尻にスタンガンを当てると高圧電流を流した。
意識を無くしたコロナを肩に担ぐ。
「そんなじゃじゃ馬でも嫁入り前の娘なんじゃし、もうちょい大事に扱ってくれても…」
「済まんがもう時間が無い」
田中はそう言うとコロナを担いで王城の奥の中庭に出た。
タタタタン タタン
その辺を彷徨いていたオークやコボルトをAKMの片手撃ちで射殺する。
田中は副操縦席にコロナを座らせるとしっかりとシートベルトを締めた。
「ほう、これは“へりこぷたー”と言う乗り物か?」
国王がペタペタと機体を触る。
「良く知ってるな」
「実物を見るのは初めてだが
キュンキュンキュン
田中は操縦席に着くとエンジンを始動した。
「あんたも乗れるけど…」
「いや、これでも一国の王なのでな、おめおめと逃亡する訳にはいかんよ」
国王が肩を竦めた。
シャキッ
田中はインベントリからM4カービン(※女神から貰ったヤツ)を取り出すとボルトを引いて初弾を薬室に送り込んだ。
「敵に銃口を向けて引金を引いたら弾が出る」
「鉄砲か、わしも一度撃って見たかったんじゃ」
田中が渡した
キーン
ジェットヘリのエンジン音が高まる。
「ところでコレ、本当に女の子なんだよな?」
「なんなら嫁に貰ってくれても良いぞ」
「では」
田中は軽口を叩いた国王に片手を上げて出発の挨拶をする。
「娘を頼む」
国王も手を上げ返す。
キーン バタバタバタバタ
「さて…」
上昇していくヘリを見送ると国王は城内へとゆっくりと戻った。
巨大な体躯のオークが王の間に居た、並のオークのニ周りは大きい、オークの上位種だ。
ソレは右手に禍々しい装飾の片手剣を持ち、左手にはコロナに爺やと呼ばれたエルフの首を持っていた。
「爺や…」
彼は
彼が殺られたのなら、もう城内に生き残りは居ないだろう…
『貴様が勇者の末裔、ヤマト国王か!』
「人に名を尋ねる前に名乗ってはどうかね?」
『ゲハハァ、俺は魔王軍四天王が一人、亜人の軍勢を率いる“オークキング”のマモン様だ、貴様の命を貰い受ける!』
タタタタタタタタタン
国王は手にした
『そ、そのようなモノ俺には効かぬ!』
ボタボタ
「いや、血塗れになってるようだが…」
M4カービンの5.56mmNATO弾の連射を浴びたオークキングは致命傷にはほど遠いが結構なダメージを受けている。
『ぬんっ!』
「ぐふっ」
オークキングが右手に持った片手剣が国王の腹部を貫いた、剣先が国王の背から突き出る。
ガシャッ
国王の手から落ちたM4カービンが床に転がった。
『ゲハハァ、これで魔王様に・』
ガシッ
瀕死の国王が両手でオークキングの右腕を掴んだ。
『チッ、死に損ないが悪足掻きを』
「わしは勇者の血が少々薄くてな…」
口から血を吐きながら国王がニィっと凄惨な笑顔を見せる。
「この魔法しか使えんのだ」
『なっ!』
「
ヤマト王国の王城を中心に眩い光が音もなく拡がる…次の瞬間、轟音と爆風と共に王城が消し飛んだ。
高熱を伴った爆発は城内のみならず王城を包囲していた魔王軍の軍勢までも巻き込み灼き尽くした…無人の荒地となった王城跡から巨大なキノコ雲が立ち昇っていく。
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