Last fight
作山をにらみつける、そこでふと疑問に思い口を開く。
「ところでどこの部活なんですか?」
返事がない、もしかして表情や感情の動きを見られるのを警戒しているのだろうか。
そんなの俺が見てもわからないのに。
「じゃあ、ゲームを続けるよ」
いつの間にかディーラーが会長に代わってる。
手元に2枚のカードが滑り俺の手の中に飛び込む。
初手を見て参加費だけを渡して降りる、または軽くチェックをして負けるの二択だ。
いつか強いカードが来ると信じて心の中は綱渡りをしている気分だ。
しかし、なかなか来ない。
そこで俺はひらめく、俺はゲームを開始したときから強いカードが来ない限りチェックはするがレイズをしていないことに気づいたのだ。
つまり、俺は強いカードが来ない限り勝負に出ないと思っているはずだ。
これは賭け、賭け事の上にあるさらなる賭け。
俺はその選択をしなければならない。
このまま勝負を続けたところで負けるのは俺だろう、それならば今までの勝負で作山の頭に刻み込まれた俺の行動パターンを信じるしかない。
カードが俺のもとにやってくる。
クローバーの6とスペードのキング、普段であればもう降りることを決め手札を机においていただろう。
しかし、俺は作山の動きを見る。
「チェック」
俺もそれに便乗する。
「チェック」
場に三枚のカードが出る、ハートのキング、ハートのジャック、ハートのA。
俺はキングがペアになったことに安堵する。
作山は、
「レイズ」
若干それも微々たるチップを上乗せしてきた。
牽制のつもりなのだろうか。
俺も牽制のつもりで微笑み、チェックをする。
そして、次のカードが開かれる。
ハートの10だ。
「レイズ」
俺も仕返しのつもりでレイズする。
これに乗ってどんどんと掛け金をつい上げてくれることを祈りながら。
作山は乗ってきた、繰り返される微小な額のレイズが。
塵も積もれば山となる、ちまちまと釣り上げた掛け金はお互いの蓄えの半分近くを蝕んできた。
まどろっこしくなった俺は大きくレイズをする。
いや、レイズというのはおかしいだろう。
「オールイン」
俺は賭けに出たこの勝負から作山が降りることに。
顔を上げ作山を見る、思い悩んでいるのだろう頭を抱え込み手札と場のカードを交互に見る。
そして最後に、会長を睨みつけ振り絞るように言葉を放つ。
「フォールド」
勝った、この賭けに勝った。
「一応次のカードを見せるけど」
そう言って会長はテーブルに五枚目のカードを置くクローバーのAだった。
「作山くん、このまま勝負を続けるかい? 今のチップだともう限界だと思うんだけど」
体を震わせながら机に突っ伏し答えない。
「わかりました、降参します」
作山は震える声でそういった。
そして俺の勝ちが決まった。
手札をなげだし背もたれにより掛かる。
「キングのワンペアだけ?」
瀬見は俺の手札を見て叫ぶ。
「完全にはめられてたわけだよわたしたちは」
これは俺の作戦がうまいこと決まったということでいいのだろうか。
「だってお前一切勝負してこなかったし勝負仕掛けてきたときなんて場にハートばかりで」
会長も口を開く
「そうだよ、僕も驚いたんだよ、まさか場にこんなにカードが出揃うとはね」
あ、もしかしてこの状況って……
俺の行動パターンを読ませて勝ったというよりもそれ以外にも場にこんなにもいいカードが揃い、ハートのクイーンを俺が持っていてロイヤル・ストレート・フラッシュが完成してると思っていたからなんだろう。
「まあ、なにはともあれ君は廃部を免れたわけだ、おめでとう」
この場に伊勢地がいないのは少し残念だが俺を勝利と言う二文字を味わうことにした。
そして俺はゲーム中から気になっていたことを問いかける。
「二人は何部なんですか?」
答えない、そしてなぜだか会長は何かをごまかすかのように笑っている。
「あ~もう終わっちゃたからいいか」
会長は頭をかきながら悪いことを自覚しながらイタズラをしている小学生のようだ。
話を聞くにどうやら会長はあわよくば全部活を潰してやろうと考え刺客として生徒会役員である作山を混ぜていたらしい。
そう俺は会長の手のひらで見事な踊りを披露していたのだ。
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