START!

 トランプが配られ場に三枚のカードが並べられる。




「フォールド」




「フォールド」




「レイズ」




「フォード」




「レイズ」




 今この場は生徒会長と作山という女が支配している。




 会長は比較的勝てるときにしか勝負をしないように見える。




 一方作山に関してはとりあえずコールをして周りのプレイヤーを見つつ時折レイズをし相手をおろし参加費をちまちま回収してきたりする。




 俺はというと、ほとんど勝負をしていない。




 最初にペアが揃わない限りはほとんど戦わない。




 初手、今はなき漫画研究会の部長が狂ったかのようにオールインし俺もAのスリーカードだったので引くに引けない状況に追い込まれたときやけくそでコールしたらまさかの相手はペアすらできていない状況だった。




 それのおかげでほぼ二人分とも言ってもいいチップを手に入れたためほとんど勝負をしなくてよくなった。




 俺は参加費をまかなえるだけの蓄えがあったがそれ以外はそうでもない。




 どこかしらで勝負に出なければならないのだ。




 そこで、搾り取られていくのは会長と作山以外の二人だ。




 やけくそになって二人の行動は俺でもわかった。




 消極的になるか狂ったかのようにレイズを繰り返すかの二人だ。




 先に倒れたのは消極的に立ち回ったほうだ、参加費が足りず必然的にオールインになってしまった。




 そこでタイミングよく強い手を引けるわけもなく。




 会長の餌食となった。




 レイズを繰り返してたやつは時々警戒して降りた敵のチップを稼いでいたものの単調になっているため読み切られる。




 作山に引くに引けないところまで連れて行かれ全部を持っていかれた。




 段々と泣きそうになっていく顔を見てるとこっちはとっても楽しくなってきてた。




 とても悔しそうに出ていった二人は部活に掛ける思いが大きかったことを深く感じさせた。




 そして、同時にあのようにはなりたくないと感じさせるのだった。




 


 三人になった。




 作山、会長、そして俺。




 手札が配られる、ダイヤの10と8正直あまり勝負に出たくない手札だ。




 しかし誰ひとりとしてレイズをしなかったので場に三枚のカードが開かれるハートの7、ダイヤの2、スペードの9。




 叫びそうになった、ここで次11が来ればストレートで勝ち筋が見える。




「レイズ」




 会長が仕掛けてくる、それも所持しているチップの半分近い数のチップだ、相当いい手なのだろうか?




 しかし俺は気づいたら口を開き




「オールイン」




 思考をすべて消し去るような直感という嵐が頭の中を通りすぎる。




 出た言葉は取り消せない、自分に驚きつつ、大きな声で宣言したからか自然と自信が湧いてくる。




 根拠のない自信が湧いてくる、しかし今この瞬間だけはその根拠のない自信を頼ることにした。




 横を振り向くと作山は驚いた顔をし、瀬見は苦い顔をしていた。




 相当作山の手も強かったのだろうか、それともハッタリだと思い思考を巡らせていたのだろうか、結果は。




「フォールド」




 作山は勝負を降りた。




 手札を投げるように置く。






 会長と俺の一対一となる。




「オールイン」




 会長も勝負に乗ってきた。




 乗らざるを得なかったのもあるだろう。




 四枚目のカードが開かれるダイヤの4だ、俺の心臓がバクバクと音を立てているのがわかる。




 次の手で11が出なければ俺は負けてしまうということをひしひしと感じ倒れそうだ。




 なんせ俺は伊勢地からとてつもなく重たい言葉を貰っている、ここで負けられないという思いとともに、伊勢地の言葉が重くのしかかる。




 俺はうつむきただただ自分の上履きを見つめる。




 最後のカードが開かれる。




 ダイヤのAだ。




 ため息すら出ない、伊勢地の居場所を奪ってしまった。




 いや、守れなかった。




 手札を机に投げ捨てる。




 会長はAのスリーカード、それに対して俺の手はノーハンド。




 だと思っていた。




「あらら、フラッシュか僕の負けだね」




負け?会長が?




 フラッシュ?何だそれ?




 スマホを開き役表を見る。




 ダイヤが5つでフラッシュ、忘れていた。




俺のカードは俺が狙ってたストレートよりも強いカードだった。




俺は自分の直感に感謝する、もしオールインしていなければ途中でビビって四枚目辺りで勝負を降りていただろう。




 


 会長がテーブルから離れる、あとは作山を倒すだけだ。




 そうして俺は作山を正面から睨むのであった。


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