新聞部廃部の危機

 月曜日、授業を終え部活動の時間帯に俺らはなぜか生徒会室ポーカーをしていた。




 なぜこんな事になったかって?




 原因はすべて気まぐれ生徒会長のせいだろう。




 ことの発端は俺が伊勢地の家寝ていたときだった。


 深い眠りについていた俺は伊勢地に叩き起こされる。


「いま生徒会長からメールが来たんだけどこのままだと廃部になるかも」


 


「メールにはなんて?」




 衝撃的な一言を告げられた俺に返せた言葉はこれだけだった。




「えっとね、




  新聞部部長 伊勢地菜々様




  この度は突然の連絡申し訳ありません。


  先日行われました、生徒会定例会で部活動の予算・スペースを実績の多い部活に活用してもらうという方針が決定しました。


  活動の形跡が見られず部員の出席している様子の見られない部活動は無条件で廃部となりましたが。


  あなた方新聞部は、目立った実績こそないものの意欲ある部員が出席されていることが確認できているため、無条件に廃部するというのはあまりにも不憫だと言うこととなりました。


  そこで、実績はないものの意欲ある部員が見られる部活のうち1つの部活だけ廃部を回避できる権利を与えようということとなりました。


  その部活の選定方法は以下のリンクにあるゲームを用いて行います。


  月曜日の放課後にゲームを始めますので遅れることのないようにしてください、開催場所は生徒会室です。」




 すごく丁寧なメールだな。




「リンクを開いてみたけどこれってポーカー?」




 俺たちの学校では部活動に関する力だけは生徒会が大きく握っている。




 反対にそれ以外に関しては、学校側から流れてきたものをそのまま流すようなことをしている。




 部活動の数も多いから、学校側も最終的に体裁さえ整っていたら過程は気にしない。




 だから、生徒会長がなんとなくやりたいなと思ったものはある程度は実現されてしまうのだ。




「伊勢地ポーカーやったことあるか?」




「ルールを軽く知ってるくらい、でもそれ手札5枚のやつ」




「今回のルールはそれじゃなさそうだな」




 送られてきたリンクを開きルールを確認するとそれは[テキサスホールデム]だった。




「ほんと、うちの学校生徒会に部活関係の権力一任してるから」




 そんなことをぼやきつつも、この自体に抗議できるほどいい身分に俺達はいない。




 今までも何度か廃部の危機に陥ったがそのたびになんとか適当にかわしつつ生き残ってきた。




 部員も規定の人数も満たしていない部活に文句を言う権利などないだろう。




「しっかし、どうするよポーカー」




「くじ引きとかになるよりはいいけど」




「とりあえず各自ルール確認して明日やってみるか」




「じゃあ、明日僕の家集合で」




 返事だけをして俺はエレベータに乗り込む。




 賢いことにエレベータはしっかりと俺のいる階にとどまっていた。




 エントランスを抜けるととても寒い風が首筋を駆ける。




 もう冬だなと感じさせるような風だった。




 手を外に出したままにするのはとても肌寒く、刺すような痛みすら感じてくる。




 パーカーのポケットに手をツッコミ適当な鼻歌を歌いながら帰路に着く。




 雲の隙間から時々見せる太陽の光が休憩をもたらしてくれているかのように感じた。






「ただいま」




 誰もいない空間に一人寂しくつぶやく。




 実際そこまで寂しく感じているわけでなく、いちいちただいまなんて言わなくていいものを、いまだに癖が抜けていない。




 以前伊勢地にこの事を話したら自分も同じだと言ってた気がする。




 家に備え付けてあるコーヒードリッパーに向かい豆と水を入れてコーヒーを淹れる。




 スマホに目を落とし、転送してもらった生徒会長のメールを見返しつつルールの確認をする。




 何度がブラウザゲームでやったことのあるゲームだが役を完璧に覚えているわけではない、花札とかにされなかっただけマシだと思っている。




 一体何この部活が参加して何人いるのだろうか、そして戦うのは各部活から一人づつ選んで戦うのだろうか。




 いろいろな疑問があるが、考えても無駄なことに気づき自室に向かい課題だけ終わらせた。




 風呂に入り洗濯をしようと思いポケットの中身を出す。




 指先に一枚の紙が当たった、レシートか何かと思い取り出すと番号の書かれた紙だ。




 昨夜のコンビニでの出来事を思い出す、連絡することはないだろうし、連絡する勇気もない俺は捨ててしまってもいいのだがそんな勇気は出ず机の引き出しに丁寧にしまい布団へと向かう。





 翌日、凍りつくような寒さのなか俺は伊勢地のマンションへと向かう。





 エレベーターに乗り込む、伊勢地と書かれた表札を確認してからチャイムを鳴らす。




「はーい、入っちゃって」




 そう言われるのと同時に扉が開く。




 中から出できたのはパジャマ姿の伊勢地。






 ではなく、パジャマのような格好をした那珂さんだった。

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