主人公は誰?

 さっき、コンビニで伊勢地に買ってもらったコーヒーと唐揚げを飲み食いしながら住宅街を歩く。




「なあ、伊勢地今度違う高校の制服手に入れて深夜を騒ぎながら徘徊するのはどうだろ」




「性格ワっる、周辺の高校の評判を下げていくのか」




「そうそう、楽しそうじゃん」




「詩織くんよ眠たくて頭おかしくなってないか」




 そうかも知れないな、一応ちょっと寝たんだけどな。




「詩織くんゴミはよろしく~」




 そう言って伊勢地は自分のココアの缶を押し付けてきた。




 おごってもらったのだからこのくらいはいいか。




 渡されたゴミをビニール袋に入れカバンに入れる。




「早く早く、こっち~」




 そう言って伊勢地は公園に走っていく。




 あいつ、何はしゃいでるんだよ。




「ねえ、一緒にブランコこごうよ」




 そう言ってすでに伊勢地はブランコに座っている。




 伊勢地の後を追い俺もブランコに座り漕ぎ始める。




 夜の公園は昼間とは全く違う顔を見せる。




 ゲームの世界のダンジョンに入るような気分だ、今すぐにでも上から強大なボスが出てこないかと感じている。






ギーコーギーコ錆びたブランコがひどく耳障りな音を出しながら揺れている。




「詩織君はまだまだだね、僕のほうが高くこげるのさ、そしてほら」




 伊勢地が空を舞った月の光と重なった伊勢地はこの夜の主人公と思ってしまうほどの美しさを感じる。




「高く飛べるんだ」




 そう言ってきれいな着地を見せクルッと俺の方を向く。




「今日は付き合ってくれてありがとう、今日はもう解散しようか」




「そうか、もうすぐ朝が来るしな」




「帰って寝ようー」




 全く、部室で突然散歩をすると言われたときは驚いたが、なんだかんだ楽しかった。




 伊勢地は俺より前を歩く、軽快なスッテップを踏みながら。




 まだ暗い世界を舞台に踊るように。




もしこの瞬間の主人公を選ぶのならば俺は伊勢地を選ぶだろう、それほどに伊勢地は輝いていた。

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