第32話

 二人の結婚にもかかわらず、新王の誕生や「2」王妃の離脱にもかかわらず、相変わらず、偶数の国と奇数の国は戦争を続けている。

 そして、さて、我らがユーリだがしぶとく生き続けている。というか、簡単には死ねないらしい。


 数の世界は修羅道というもの。天に迎えるには危険過ぎ、かといって地獄に入れとく程でもない。人道、餓鬼道では不安定過ぎる。そんな魂の行き場。

 善に触れず悪を極めず抱えた矛盾の多い処理系を絶え間ない戦いの中に置く修羅の道。重い罪を重ねた魂の「懲役」と考えてよい。


 彼には前世の業により「罪人期間最長」の呪いがかけられていた。


 あるとき、ユーリの元に「21」ブラックジャックが訪ねてきた。

 彼は国王「7」と「2」王妃から生まれた王子だ。なぜかモグリの医者をしている。


 奇数の国には奇数しか生まれず、偶数の国には偶数しか生まれない謎を解いたという。


「ホンモノのワルモノ達が居るんです!」


「本当のワルモノ?」


「そう、出産に必ず立ち会う、除算師です」


「助産師?」


「そう、除算ですよ。彼らは適当な数で割って結果を奇数なり偶数なり決められた数に丸め、あまりを自分たちのポッケにナイナイしてしまうんです」


「ポッケにナイナイ!」


 そう、数の世界の出産には必ず「除算師」と呼ばれる数が立ち会う。


「あまり、剰り、甘利、あまい利益とも書けるな………なるほど」



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