第23話

 そして数の世界の「あるある」がもう一つ。弔い合戦が始まろうとしていた。



「とむらいがっせん? なんだそれは? 選挙があるのか?」


「ホンモノのオオモトの弔い合戦ですよ。山崎の戦いとか、人取り橋の戦いとかあったでしょう。元の世界で」


「ああ、猿の恩返し、とか」


「えっとサルカニ合戦はちがいますけど」


「いや、山崎の戦いであったぞ、中国の恩返し」


「あ、羽柴秀吉の中国大返しですね」


「そうともいう」



 まぁ、そんなわけで兆兵令により有象無象が集められ、予備役は呼び出され、史観学校は前倒し卒業となって、兵が揃った。

 ここから始まるオオイクサを数の世界の歴史上「数取り橋の戦い」と呼ぶ。

 

 名前にある「数取り橋」は偶数の国の交通の要衝「2が待つ城」を天然の堀として守るアチラ川に架かる。

 

 この戦い。両者の狙いは明白だった。

「狙いはカウンターです」

 奇数の国は「偉大な将軍の数え歌」


♪~

 ひとつ 人より力もち~♪


 などと、歌っての攻勢。残念ながら著作権の関係もあり、偶数は使えないなど制約多く、長いフレーズは使えない。


 対して、偶数の国はプリンセス・ツウが自ら陣頭指揮。後に「悪魔の手まり歌」と呼ばれる歌でこちらも攻めだ。


♪~

まる  たけ  えびす  に  おし  おいけ 

あね  さん  ろっかく  たこ  にしき 

し  あや  ぶっ  たか  まつ  まん  ごじょう 

せった  ちゃらちゃら  うおのたな 

ろくじょう  さんてつ  とおりすぎ 

しちじょう  こえれば  はち  くじょう 

じゅうじょう  とうじで  とどめさす~♪ 


 もう著作権など無いだろう数え歌を使った絶妙な陣形。

プリンセス・ツウ「2」王女は最終的にその十乗「1024」にまで膨れあがり、岐路に近いところでトドメとなった。



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