第15話、お買い物

 朝からひとしきりじゃれ合った俺達は近くのスーパーマーケットへ買い物に来ていた。


 目的は午後からのお菓子作りに必要な材料を買う為だ。


 純白にお菓子を作ってあげるという約束を実行に移す為、二人で並んでスーパーの食品棚を見つめている。


 俺はいつもランニングに使っているジャージ姿で、純白が着ているのは可愛らしい水色のワンピース。清楚で可憐な純白の外見が更に引き立てられていて、すれ違う男性が思わず立ち止まって目を奪われる程に可愛いらしい。


 カートを押している俺は一度目の人生で会得したパンケーキのレシピから必要な材料をメモに書き出し、純白は俺の指示に従って材料をカゴに入れていく。


 今日は昼からお菓子を作ると話をしてから、純白の澄んだ青い瞳は輝いており笑顔を絶やさなかった。


 お菓子を作りたいと言い出したのは俺ではあるが、純白も一緒になって楽しんでくれているのは嬉しいことだ。妹も俺とパンケーキを作りたいそうでやる気に満ち溢れている。


「えへへっ。兄さんと一緒にお菓子作りが出来るなんて、とっても楽しみです」

「この前、約束したからな。純白の好きなパンケーキを焼いてあげるって」


「お菓子作りだけじゃなく、こうやって材料を買うところから一緒だなんて。今日は朝から本当に幸せですっ」

「いっぱいじゃれ合ったしな。俺としてはまだまだ足りないけど」


「ふえっ……!?」

「朝もたくさんじゃれたけど、純白の可愛さを堪能するには時間が足りなくてだな」

「……っ!! は、はい……。わたしもまだ全然足りませんから……。兄さん、いっぱいいっぱい甘やかしてくださいね……」


 両手で口元を隠しながらもじもじと身体を揺らす純白。


 その仕草だけで可愛いのだが、もっと甘やかして欲しいと言われればお兄ちゃんとして応えてあげなければならないだろう。


 それにしても純白がここまで甘えん坊だとは思わなかったな。朝も膝枕をしながら頭を撫でてあげたら、幸せそうな表情で眠ってしまったし。安心して眠っている純白もとてつもなく可愛かったのを思い出す。


 手作りケーキを食べさせてあげたら一体どんな顔をしてくれるんだろう。そんな事を思いながら純白と一緒に材料を選んでいく。


 買い物をしている最中の純白は、上機嫌で鼻歌交じりに歩いていた。スキップでもしそうな勢いで今にも踊りだしそうだ。

 

 純白が元気に動く度に着ている青色のワンピースのスカートがふわりと浮き上がる。


 スカートの下の隠れた部分が見えそうになって、周りにいた男性達が鼻の下を伸ばしながらそんな純白の様子を眺めていた。


「ちょっ……純白」

「兄さん、どうしたんですか?」


「あんまりはしゃぐと駄目だぞ。ほら」

「わわっ……ご、ごめんなさい……」


 純白も周りの視線に気付き、恥ずかしそうに頬を赤らめて急いでスカートの裾を押さえる。


 そんな純白の頭をぽんぽんと優しく叩くと、妹は照れながら俺を見上げた。


「兄さんとのお買い物が楽しすぎて、ついはしゃいじゃいました……」

「気持ちは分かるよ。俺も純白と買い物するの楽しいからさ。でもほら、純白は可愛いんだから色々と気を付けないと」


「は、はいっ……。気を付けますね、ありがとうございます。兄さん」

「よし、良い子だ」

「えへへっ」


 俺が褒めると純白は嬉しそうに微笑む。


 こんな風に素直に俺の言葉を聞いてくれる純白は本当に天使だと思う。可愛くて優しくて元気で、こうして何気ない日常を純白と過ごすだけでも幸せが溢れてくる。


 そうして買い物を済ませた俺達はスーパーを出て帰路につく。


 材料の入ったエコバッグを二人で持ちながら、俺達は晴れ晴れとした青空を見上げた。


「今日は良い天気だな、日差しがすごく気持ちいいよ」

「ですね。今日みたいな日は日向ぼっこしたら最高です」


「それも良いかもな。作ったお菓子で満腹になったら、リビングにお布団敷いてお昼寝しようか?」

「食べた後にすぐ横になったら牛さんになっちゃいますよ?」


「でも牛になっても良いくらいの昼寝日和だよなぁ」

「ふふ、確かにそれは言えてますね。じゃあ一緒に牛さんになりますか?」


「そうしよう。純白と一緒に牛さんだ」

「あっ、それならあの……腕枕してくれませんか? 膝枕の次は兄さんの腕枕で一緒にお昼寝したいです……」


「甘えん坊だな、純白は」

「はいっ。わたしは兄さんが大好きな甘えん坊です」

「全くもう。純白は本当に可愛いんだから」


 俺にだけ見せてくれる無邪気な笑顔。それはあまりに愛おしくて、もっともっと甘やかしたくなってしまう。


 今日は美味しいケーキを食べて、純白とお昼寝して、徹底的に甘やかして、ふにゃふにゃになった純白を可愛がろう。


 家に帰った後の事を考えながら歩く俺と純白の足取りは軽やかだった。

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