第2話 叶える代償


 俺は、学校というところに行ってみたいと思う。だが、この願いも叶うはずがない。だから、俺は一生この狭い病室で過ごすことになる。ソトの世界に興味があった。ソトの人間に。だから、俺はオンラインで学校に通っている。毎日画面で見ている、ソトの人間達の生活。1度だけ、1度だけで良い。あの中に混じって、生活してみたい。なんて願いも叶うはずがない。このゲンジツから抜け出したい。年齢上、中学校卒業まであと半年。せめて、この半年は自由に、あの雫のように過ごしてみたい。あぁ、楽しみだ。どんな光景がソトで見られるのだろうか。


 俺は起き上がり、1歩ずつ歩き始める。壁を伝って、ゆっくりと。ソトへ向けて、学校生活を送るために。俺の全てと引き換えに手に入れたこの半年で、俺の最後の半年を楽しむために。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る