ソトの世界の雫に願いを
U朔
第1話 あの空間に行ってみたい
雨。窓を、この世界でさえも、青白くぼやかしている。誰のカルマか、それともどうにようもならないサガなのか、俺には理解も、想像すらできない事象。あぁ、なんて綺麗な雫だろう。これほど綺麗なのに、どうして純粋に喜べないのだろう。それが我がサダメ、ではないだろうに。
綺麗な雨。同じ降り方は、もう二度と姿を現さない。その刻限りの儚い姿。俺は思う。これほどこの儚い姿を見るのに適した時間はないだろう、と。
9月の初旬。夏休み明けテストという名目で、この学校は2日かけて全9教科の復習テストを行う。正直言うと、退屈なのである。復習というだけでも退屈なのに、簡単すぎるのである。過去2年間もこうだった。開始5分で解き終え、後はヒマをする。テスト自体は退屈だが、このヒマが俺はスキなのである。この窓から見る、数多の雨粒。このエアコンが故障してジメジメとして汗ばむ部屋から見る、青白く濁った街。静かな部屋に響き渡る雨の音。机の上に落ちる1粒の汗。これら全てが、俺という存在のカルマを減らしているように感じる。見れば見るほどに、あの雫に引き込まれそうになる。1度だけ、1度だけで良い。あの中に、あの空間に俺を連れて行ってはくれないだろうか。なんて願いも叶うわけなく、ただ見ている事しかできない。そう、俺はヒトという括りの檻に閉じ込められた1生物にすぎないのだ。これが我がサダメ。だから願ってはいけない。ソトに、あの空間に行きたい、と。あんな風に、自由に動き回りたい、と。
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