第20話

 迷宮の十階層。

 階層主フロアマスターのいた闘技場で宙に浮かぶ銀色の蜥蜴が神授工芸品アーティファクトについて教えてくれる。


 得体の知れない蜥蜴だけど、ひょっとしてこの蜥蜴も精霊の一人なのかな?


「君は魔法をどれだけ使えるんだい?」


「飲み水を出したり、火をつけたりといった程度しかできないよ」


 神授工芸品アーティファクトの扱いを見ていた蜥蜴が僕に質問してきたので、素っ気なく答える。


「なるほど。まだ小さいからね。

 これから魔力が増えると使える魔法も増えるよ」


「そんなものかな?」


「そんなものだよ。

 自分で使える魔法が少ない方が精霊に任せて上手くいく場合もあるから、心配しなくていいよ」


 シルヴィア姉さんのような凄い魔法も使えないし、何なら無愛想に答えた生活魔法もそんなに使えない僕に対して蜥蜴が暢気に言った。


「そう、なのか?」


「まあ、それは置いといて銀の黄金虫アルゲントゥ・ミネラについて話そうか。

 この世界には五行の力が循環してる。

 木火土金水もっかどごんすいの五行が基本になって、色んな精霊がいるし、精霊たちの姿や考え方、好みなんかも色々と違う。

 当然、得意な魔法やスキルも違う。

 そもそも精霊と縁があるかどうかは置いといて、縁があって主従関係や協力関係、支援関係などの色んな関係を結べると力を貸してもらえる。

 ただ借りられる力はその妖精のできること次第になる」


「僕が借りれるのは銀の黄金虫アルゲントゥ・ミネラの力、銀の黄金虫アルゲントゥ・ミネラのできることをしてもらえるってことだね」


「うん。そういうことだ。

 まぁ、まだ銀の黄金虫アルゲントゥ・ミネラのことは分からないだろうから、簡単に説明すると金属性の昆虫の精霊だね。

 金属性、つまり土の中から金属が生まれる、金属が冷えると表面から水が生まれるという相生そうせい、火は金属を溶かす、金属製の斧や鋸は木を傷つけ切り倒すといった相剋そうこくが五行の基本なんだけど、そういう世界に住んでるのが妖精なんだ。

 だから得意なことと弱点がはっきりしてる。

 土の中から金属を生み出すのが得意で、逆に水に力を奪われてしまう。

 もう一つ、昆虫なので木属性、その下位属性の風や雷を強化するのも得意だ。昆虫は木の側で暮らしてるから、木属性を操るのが多少は上手くできる」


「……五行は習った。

 魔法の訓練で魔力を練ることと五行の関係」


「ふーん。

 知ってるんだ。

 知ってる割には中途半端だけど……」


 そう言いながら小さな蜥蜴が首を捻る。

 そんな仕草には人間味がある。


「こんな田舎だと魔法を使える人は少ないから……。

 シルヴィア姉さんと教会のリリエッタさんぐらいだけだよ」


「ふーん。少ないね。

 幼くても魔法は使えるのに勿体ない。

 流石に若くて上手い使い手は少ないだろうけど、君の適性は?」


「適性?」


「そう適性。

 まぁ、分かってるけど、ちゃんと知ってる? って話し」


「まだ、知らない。

 上級学院に入ったら検査をするって聞いたけど……」


「そうかぁ……。

 まぁ、何となくそうだろうとは思ったけど……」


 飛び回るのを止めた蜥蜴が渋い顔をした。

 得体の知れないノリからシリアスに変わられると身の危険を感じる。


 僕が少し身構えると蜥蜴が気軽に言った。


「君に初回特典プレミアボーナスをあげるよ。

 しばらくこの迷宮を自由に攻略するといい」


初回特典プレミアボーナス

 限定特典リミテッドボーナスのことかな?」


限定特典リミテッドボーナスよりも、もっと特別な特典ボーナスだよ」


 そう言って空中を舞うと一瞬で消えた。



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