第14話

 迷宮での初戦に無事、快勝した僕たちはその後も順調に探索を続けた。


 シルヴィア姉さんがまだまだ余裕があると言ったので、その後は戦闘の比率を上げ、半分を倒し半分はやり過ごすといった方法で先に進む。


 三階層の後半で魔泥亜人形マッドゴーレムが出てきた。弱点も分からないので僕が力押しで鉄の片手剣を突き刺して葬った。


 魔泥亜人形マッドゴーレムと言っても泥でできた人形のなり損ないで、泥でできた粘性捕食体スライムのようなものだ。

 魔泥亜人形マッドゴーレム粘性捕食体スライムとは違いシルヴィア姉さんの火魔法が効き難くく、また剣が通り難いので衛士隊の三人ではなかなか剣を通すことができなかった。

 三人では無理だったので、僕が力任せに片手剣を突き刺して倒した。


 四階層は魔泥亜人形マッドゴーレムの頻度が上がり、五階層に入ると魔石亜人形ストーンゴーレムが出た。

 魔泥亜人形マッドゴーレムよりも人型に近くなって立って歩く二メートルほどの石の巨人だ。

 鉄の片手剣では歯が立たなくなったが蒼光銀ミスリルの長剣を使うとアッサリと倒すことができた。


 ちなみに三階層で蒼光銀ミスリルのレイピア、四階層で蒼光銀ミスリルの小型の盾、五階層で蒼光銀ミスリルの腕輪を手に入れた。

 蒼光銀ミスリル貴重レアなはずだけど、全身蒼光銀ミスリルで固められるのだはないかと驚くほどの成果だ。




 そして、五階層で魔石亜人形ストーンゴーレムを倒した僕たちは街に戻る。


 迷宮から出ると夕焼け空で、探索にはかなり時間がかかったことに気付いた。


 同時に昨日から気を張り続けていたことにも気付く。

 昨日集団暴走スタンピードが起きて走り回り、おまけに眠れなかった。

 ……それでも、まだ湧いてくる力がある。

 集団暴走スタンピードで何かが変わっている。




 屋敷に戻るとすぐに報告のために父さんの寝室を訪れる。当然、母さんや長女のサラティ姉さん、三女のスファルル姉さんも同席する。


「ハク、シルヴィア、ご苦労だった」


 順調に回復している父さんは声に力が張りが戻ってきた。

 母さんも少しは休めたようで顔色が少し良くなった。


 僕は手に入れた蒼光銀ミスリルの長剣、レイピア、盾、腕輪を順に並べて迷宮の様子を報告した。

 シルヴィア姉さんの魔法の威力を伝え、衛士隊のパックスたちの働きを褒めるとスファルル姉さんが妬ましそうな顔をした。


蒼光銀ミスリル神授工芸品アーティファクトの件は限定特典リミテッドボーナスと呼ばれる現象だな」


限定特典リミテッドボーナスですか?」


「そうだ。迷宮の深層階、誰も到達したことのない階層に初めて到達した者が得られる特別なアイテムだ。

 恐らくできたばかりの迷宮だから、ハクが最初の到達者として手に入れることができたんだろう」


「それは……、他の人が先に到達してると得られなくなるということですか?」


「そうだ。一定周期で発生するとも聞くが、詳しくは分からないな。

 ただ少なくとも浅い階層でそんなに頻繁に貴重レア神授工芸品アーティファクトが獲得できる訳ではないだろう」


「そうなんですね」


「それにしても粘性捕食体スライム亜人形ゴーレムとは厄介な組み合わせだな」


「はい。

 粘性捕食体スライムに対して剣などで戦い腐食させてしまうと魔泥亜人形マッドゴーレム魔石亜人形ストーンゴーレムで剣が折れるか曲がってしまいます。

 魔術師を確保しないと先に進めません」


「なるほどな。

 蒼光銀ミスリルではどうだ?」


魔石亜人形ストーンゴーレムに対してはかなり余裕がありました。

 正直、鉄剣では魔石亜人形ストーンゴーレムに太刀打ちできなかったので、蒼光銀ミスリルじゃないと無理だと思います」


粘性捕食体スライムはどうだ?」


「すみません。試していないです。

 何かあったらと思うと試せませんでした」


「そうか。まぁそれもそうだな。

 では、再度迷宮に潜るには蒼光銀ミスリルのレイピアも活用しなければならんな」


「はい。私が使っている長剣だけだと、五階層以降は苦しいと思います。

 シルヴィア姉さんが魔法を使って、僕が亜人形ゴーレムと対峙するとそこまでです。亜人形ゴーレムが複数になると手が足りません」


「確かにそうだな」


「あの、お父様、宜しいですか?」


 これまで黙って聞いていた長女のサラティ姉さんが背筋を正して聞いてきた。



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