第6話
街に帰投する際、西門の前で森の中で助けてくれた長女のサラティ姉さんに抱き抱えられた。
「ハク! 無事だった? 怪我はない?」
僕を立たせると肩から順にポンポンと叩きながら足元まで確認すると、顔を両手で押さえると目を合わせてくる。
「無事なようね。姉さん心配したんだから」
そう言って僕を抱き締める。
恥ずかしいからやめて欲しいのだが。結構な力なので大人しく抱き締められることにした。
西門の前、あちこちで無事を喜ぶ声が上がっている。
それと同時にまだ帰投しない兵士を待つ声も聞こえる。
突然の
僕は森で巻き込まれたし、急拵えの防衛戦だ。
ただでさえ小さな街で街の防衛隊も規模が小さい。
運良く撃退できたけど被害規模は想像もつかない。
サラティ姉さんとの会話もそこそこに屋敷に戻ると、次女のシルヴィア姉さんと三女のスファルル姉さんが出迎えてくれた。
「「ハク! 大丈夫だった?」」
「血だらけよ、どこを怪我したの?」
サラティ姉さんと同じように二人して僕に抱きついてきた。
右からはシルヴィア姉さんが、左からはスファルル姉さんが僕の身体をポンポンしながら怪我がないか確認してくる。さっきサラティ姉さんがしてきたのと同じことを二人がかりでやってくると、最後に改めて二人で抱き締めてくる。
「くっ、苦しひぃ。
大丈夫だよ。サラティ姉さんが見つけてくれて馬に乗せてくれたから」
「「心配したんだから」」
「シルヴィアもスファルルもハクは怪我もなさそうだし大丈夫よ。お父様たちは?」
サラティ姉さんが二人を引き剥がしながら聞いた。
二人は抵抗しつつもサラティ姉さんに剥がされていく。
「「……」」
二人は顔を見合わせると、何かを言おうとして躊躇った。何て言おうか考えてるみたいだ。
「ん? 何かあった?」
「そうね。姉さんも帰って来たし、お父様のところに行きましょう」
「はい。今、お母様が一緒ですし、まずは二人の無事をお伝えしないと」
僕とサラティ姉さんは二人に引きずられるようにして父の寝室に連れられて行った。
……寝室?
父さんが負傷したのか?
「お父様、シルヴィアです。
ハクとサラティ姉さんが戻りましたので、お連れしました」
「入れ」
許しが出たので扉を開けると、父さんが寝台から半身を起こして待っていた。隣で母さんは心配そうにしている。
「父さん!?」
「ハク、よく戻ったな。無事で良かった。
サラティも無事帰って来て良かった」
「はい。森にいたところをサラティ姉さんに助けて頂きました。
父さんたちと合流した後も特に怪我をせずに掃討戦に参加することができました」
「そうか、いつの間にか腕を上げたな。見違えたぞ。
サラティもよくハクを見つけてくれた」
「はい。ハクが森に入ったと聞いていましたので、見つけることができました」
「そうか」
父さんは改めて僕たちを順に見た。
確認していく、というのが正しいかも知れない。
僕と、サラティ姉さん、シルヴィア姉さんとスファルル姉さん。
最後に母さんを見て、一息ついた。
「長男のフォルスは重体だ。
儂も腹を黒牛に突かれて今は動けぬ。
今はこのメイクーン領の危機である。
しばらくは
「領主様!」
父が話してる最中に兵士長が扉を開けて駆け込んで来た。
こんな場合に、と思ったけど、まだ先ほどの父さんの言葉がよく理解できなくて、言葉にならない。
父さんの言葉が頭の中で反響する。
フォルス兄さんが重体?
意味が分からない。
さっき、父さんと一緒に一時撤退をしたのに……。
「何事か?」
父さんは一呼吸置くと兵士長に尋ねた。
僕は固まったままだ。
兵士長が扉の横で膝をついて頭を下げている。
「申し訳ありません。
火急、お取り次ぎ報告致したいことが」
「分かった。申せ」
「先ほど南の門の前にリック様と兵士たちが戻りましたが、リック様は熊の魔物に襲われ……意識不明の重体です。
現在、教会で治癒を行っています。
申し訳ありませんっ!」
兵士長が頭を床に擦り付けて、声をグシャグシャにして報告した。
急に眩暈がして、
何なんだ?
さっきフォルス兄さんが重体って、今度はリック兄さんが……。
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