第3話

 デカい図体の大山椒魚グランレプティアがあちこちの切り傷から血を流しながら迫って来る。


 幾度となく斬りつけたけど、全く動きを止める気配が無い。


 どうすればいい?


 大山椒魚グランレプティアに殴られ、痺れる左腕を上に突き上げ、問題ないことを確認すると魔物モンスターを睨む。


 大山椒魚グランレプティアは大きな口の周りと前脚に切り傷が集中している。

 馬鹿の一つ覚えのように、オレを見つけると四つ脚で勢いをつけて口を広げ飛び掛かってくる。


 どうする?


 まずは、動きを止めるか。


 決断すると今までの袈裟斬りではなく、前脚の付け根目掛けて身体全体で片手剣を突き刺す。


 ドスッ!


 表皮を突き破った。


 が、しかし片手剣が肉に埋まり抜けなくなると、暴れた大山椒魚グランレプティアの動きで空に振り飛ばされた。


 くうっ!


 振り飛ばされると受身を取って地面に落ちる。


 ドサッ。


 ゴロゴロと転がり泥に塗れて片膝をつくと、片手剣を探す。


 !


 片手剣はオレが突き刺した左前脚の付け根に刺さったまま、大山椒魚グランレプティアの動きを止めている。


 何とか、あの剣を取り戻さないと。


 動きの鈍い大山椒魚グランレプティアに向かって走り出すと、突き刺さっている片手剣に右手を伸ばす。


 届けっ。


 突き刺さっている片手剣を握ると両手で掴み、大山椒魚グランレプティアを蹴り飛ばして引き抜いた。

 一旦距離を取ると、再度駆け出して血の流れる斬り跡に剣を突き刺す。


 ズシッ。


 前脚が半ばまで斬り裂かれると、体重を支えられなくなった大山椒魚グランレプティアの体が沈み込んだ。


「次はここだぁっ!」


 半分切り落とされた前脚を踏み台にして大山椒魚グランレプティアの体に駆け上ると、オレの頭よりも大きな目玉に片手剣を突き刺した。


 グシャッ。


 一瞬、キンとした硬質な硬さを感じた後で、グシャリと何かが潰れる感触を感じる。


「はぁーっ!」


 片手剣を目玉に突き刺し、更に脳天に向かって斬り上げる。


 大山椒魚グランレプティアの硬い頭骨が剣の動きを止めるけど、平らな鼻を踏み締めて更に力を込める。


「いっけぇーっ!」


 一気に剣を振り抜いた。


 シャキーーーン!


 振り抜いた片手剣が頭上で余韻を響かせると、大山椒魚グランレプティアが動きを止めて倒れ込んだ。


「やったか」




 ……いつの間にかあちこちに大山椒魚グランレプティアの血溜まりができて泥沼ができ、その泥沼から毒素が噴き出ている。


 あぁー、どうするかな? これ?


 大山椒魚グランレプティアを倒したまでは良かったけど、森の一部とは言え、汚染された泥沼を見ていると取り返しのつかない事態に気づかされる。


 オレの身体にも獣たちの赤い血と大山椒魚グランレプティアの緑の血がこびりつき、泥に塗れた服はあちこちが破れている。


 魔物モンスターの襲来が収まった森で暫く悩んでいると、平野の方から騎馬の駆ける音が聞こえた。


 音の聞こえた方に視線を向けると、軽装に皮当てをした騎馬隊がこちらに向かって走ってくる。


「大丈夫?!」


 馬から飛び降り、長い銀髪を靡かせた女騎士が言った。



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