王都ルーメン
王都ルーメンに着いてから私が真っ先にやらねばならないことは、王との謁見だ。今回の仕事は王直接の依頼だからだ。依頼を私は途中離脱させてもらいますという主旨のことを王に伝えなければならない。まぁそれ自体は緊張したが、恙無く終わった。問題は、その後渡された袋のほうだ。まさか途中離脱したのに依頼の報酬を一部貰えるとは王の太っ腹さに感動して袋を振ってじゃらじゃら鳴らしていた。銀貨何枚くらいくれたのだろうかと中身を確認すると全部金貨だった。どうしよう。こんな貰っていいの。てかこんなお金使えきれない。真面目にどうしよう。とりあえず私は街から少し外れた所にある私達の家に向かった。
この家は私とリヒトが一緒に孤児院から独立する時に木の板やらなんやらで作った自信作だ。めちゃくちゃボロい。とりあえず中に入って様子を見る。何か盗まれてはいないようだ。盗むような物は何もないが。ここに来た目的はリヒトとソーニャに旅に出ると置き手紙を残すためだ。帰って来たら、療養していると思った怪我人がいない。なんてことになって驚きで目玉が飛び出ないようにするための私なりの配慮というわけだ。目玉が本当に飛び出るなら見てみたいような気もする。手紙なに書こうかな。
この孤児院に行くのは私たちの面倒を見てくれていたガーラン先生が亡くなって以来だった。今は先生の知り合いの人がこの孤児院を運営しているらしい。入り口は古めかしいと言えばいいのか伝統があると言えばいいのか、あいも変わらずボロかった。なんだか懐かしいなと感慨に浸っていると、中の子供が不審に思ったようで、男の子が話しかけて来た。
「お姉さんどうしたの?」
「お姉さんここの孤児院出身なんだ。だから懐かしいなと思って」
ここの孤児院出身と聞いて少し警戒感が収まったようだ。
「ここの孤児院楽しい?」
そんな質問をすると少し迷った後男の子は
「うん、すげぇ楽しいよ。大人の人は優しいし、友達はたくさんできるし」
そう心の底から思っているかのような顔で言う。どうやらガーラン先生がいなくても上手くいっているようだ。
「大人の人は今いる?」
男の子は首を振る。
「じゃあこれ大人の人に渡しといてくれる?」
私は袋を手渡した。
「これ何?」
「秘密。それじゃもう行くから。」
「もう行っちゃうの?」
「うん、お姉さん忙しくてね。大人の人によろしく伝えといてね。」
私の故郷の村があった場所は王都ルーメンから歩いて数時間の近場にある。そこに私は墓参りに来ていた。手を合わせて墓に話しかける。
「お母さん、お父さんお久しぶりです。どうやら私も近々そちらに行きそうです。」
「仕事中にちょっとヘマって。リヒトは多分元気です。リヒトのお父さんお母さんにもそうお伝えください。」
例えばこの村で信仰されていた宗教では火の神を神とし、死んだ後は現世の罪を神様に焼かれそして天国へ行くことができるという。
例えばソーニャが崇拝している宗教では水の神を信仰していて、死んだ後は現世の罪を神様に洗い流された後また現世に戻ってくるらしい。
仮にどちらかが真実だとしてどっちの方が嬉しいだろうか。そんなことを幼い頃リヒトとよく遊んだ木の下で考えていた。昔はよく近所の悪ガキにいじめられてしょっちゅう泣いていたというのに今ではあんなに立派になって。...私は誰目線なんだろう。死んだリヒトのお母さん目線?まぁ死んだ村の人達に言えるのはリヒトは元気に生きてますよということだ。
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