第41話 アラクの恩返し

「白衣ってのは僕達みたいな医療や調理に関わる人、実験をやる人達が着る制服なんだ。衛生管理しやすく清潔に保つために白とか淡い色が多くてね」


 俺の説明をアラクはしっかりと聞いている。


「それで、スクラブかケーシーか迷ってるんだけど……」


 聞いたことない言葉にアラクはさらにそわそわとしていた。


 スクラブとは首元がVの字になっており、名前の通り"ごしごし洗う"という英単語から来てるぐらい耐久性が良く、速乾性が高いのが特徴だ。


 逆にケーシーは首元まで襟があり、丈が短い白衣のことを言い、布が繊細なことが多く乾きにくいことがある。


 最近では生地の速乾性やストレッチ性も良くなっている。


 名前自体聞き慣れないが、アメリカのとあるドラマから来ている。


 そして、一般的に医療現場ではスクラブかケーシー、そして大体の人のイメージである長い白衣を着ていることが多い。


「デザイン的には作れそうかな?」


 地面に簡単に書いた絵を見て、少し説明を加えることでアラクは理解していた。


 それよりも創作意欲が湧いたのかワナワナと震えている。


「今すぐ作ります! 明日には持っていきます」


 そう言ってアラクは自身の家に戻って行った。


 なぜか一瞬脚がたくさんあるように見えたが、俺は疲れているのだろうと目を擦っていた。


「魔王様ー!」


 遠くから声をかけて来たのは、可愛いフリルがたくさんついたワンピースを着た幼女のスライムだ。


「何かあったのか?」


 言われなければスライムとわからないほど見た目は普通の幼女だ。


「ガーゴイル達が探していたよ!」


 スライムにガーゴイル達が探していた理由を聞くと、ジムに使うためのマシンに必要なものを探しているようだった。


「あー、錘を引っ張るのに丈夫な紐がほしいってことだよな?」


「そうなの!」


 マシンに必要な錘は森の一部を削って持ってくると言っていたが、それを釣り上げる頑丈な糸は存在していなかった。


 俺がマシンを雰囲気で伝えてガーゴイル達が作ることになっていた。


「それもアラクさんがどうにかできるか聞いてみるね」


 俺がアラクがいた建物の前に来ると、"作業中のため開けないでください"と書かれていた。


「んー、開けないほうがいいのかな?」


 なぜか頭の中では有名な鶴の日本の民話がちらついていた。


「開けちゃえ!」


 悩んでいるのに気づいてなのか、スライムは気にせずに扉を開けた。


「あー、勝手に開けちゃダメだよ」


 俺は急いで扉の取っ手を掴むが間に合わなかった。


 視線を上げるとアラクの腕が沢山あったように見えた。


「……」


 俺は見なかったことにするためにゆっくりと扉を閉めた。


 アラクは制作するために必死になっていたのか、俺が開けたのに気づいていないようだ。


「早く動きすぎて腕が沢山あるように見えたな……」


 きっと早く動いて乱れている姿を見たくないのだろう。


「魔王様、後でいいの?」


 驚いた俺とは反対にスライムは普通通りだった。


「ああ」


 静かに答えるとそのままスライムを抱えて屋敷に戻ることにした。

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