第40話 アラクの洋服店
サハギンがアラクを連れて来てから街の様子はだいぶ変わった。
まずは、服装がお洒落な物になっている。
俺はサハギンを通して、アラクに服の作成をお願いしたところ着心地が良く、耐久性も比較的良い服が出来ていた。
転移前に着ていた服と素材自体はあまり変わらない。むしろ、アラクの服の方が質自体は高級だ。
以前は基本的にコボルト達が狩猟で狩ってきた動物の皮を使って服を作っていた。
そのため、全体的に服が硬めで動きにくいという難点があった。
さらに、魔物達は特に服を着る習慣はなかった。
ゴブリンは腰布と俺ぐらいしか布を使う機会がなかった。
また、アラクが来てから食料の確保が前より多く必要になったため、コボルト達には夜にも狩りがしやすいようにと、俺はアラクに相談し黒色に染めた忍者装束を今は着ている。
アラクも楽しくなってきたのか協力的で、服を作る機会が増えるといつのまにか魔物達のお洒落ブームが始まっていたのだ。
「慶様何か良いデザインの服はありませんか?」
しばらく魔物達の服を作るようになってからはアラクの創作意欲の方が高まっていた。
前までは仕方なく作っていたのが、今じゃ本人から何を作って欲しいのか聞いてくるようになった。
「んー、一通り作ってもらったからな……」
ゴブリンには作業がしやすいように作業着としてツナギを作り、ゴーレムにはスーツを着てもらっている。
スケルトン達にも服を考えたが、体が骨だけのため中々似合う服も見つからなかった。
「今のところは……」
俺が断ろうとするとアラクは周りから見てもわかるぐらいに落ち込んでいた。
そこまで落ち込むとは俺も思っていなかった。
「あー、そんなに落ちこま――」
「慶様にはわかりますか? やっと人から必要だと思われたのに、急に何もやることが無くなった寂しさを!」
「ああ、そうだな」
アラクの勢いに俺は圧倒されていた。そこまで、アラクの生き甲斐になっているとは思いもしなかった。
「んー、他に必要な……」
俺は自身の体を見てみると、意外に大事なものを忘れていた。
「あっ、白衣を忘れれれれえぇぇ」
「それは新しい服ですか! 慶様!」
"白衣"という単語を聞いた瞬間にアラクは俺の服を掴み暴走していた。
小さな体からどれだけの力が出ているのだろう。
そんな中、俺はアラクの作った服のストレッチ性に驚いた。
アラクが掴んだ服は想像以上に伸びているのだ。
「慶様、早くその白衣という物の作り方を教えてください」
アラクに振り回されると徐々に酔い始めてきた。
「あー、そろそろ止めないと気持ち悪い……」
「あっ、すみません」
「痛っ……」
アラクが突然手を離すと、俺はそのまま床に打ち付けられていた。
やはり隠してはいるが魔族という種族の影響なのか力も強い。
ゴーレムから魔族と聞いた時は驚いたが、特に魔物と変わらないし問題はない。
むしろこの街の一員として馴染んできている。
「とりあえず白衣のデザインから説明しないといけないよな」
俺は建物の外に出ると、地面に絵を書きながら簡単に説明することにした。
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