第36話 色欲の魔族【side:魔族】
ある屋敷では男が怒鳴り散らしていた。屋敷内は荒れ果て、部下達もボロボロの状態だった。
「ローゼ様、落ち着いてください」
男の名前はローゼ。彼は"色欲"の魔族だ。
見た目はインキュバスのためか、どこか露出は多めだ。
「こんな状態で落ち着けるか! あいつらはどこに行ったんだ」
どうやら部下達が偵察に行ってから帰ってこないのを、ローゼは心配しているらしい。
「それはローゼ様が森の屋敷に偵察に向かわせたではありませんか」
「ああ、そうか」
ローゼは長い眠りから目が覚め、まだ完全に頭が働いていないらしい。
部下のガーゴイル達も体が動かしにくいのか、荒れ果てた屋敷の掃除もできず、屋敷内は放置されている。
「それで偵察隊からの情報は入ってるのか?」
ローゼからの問いにガーゴイル達は周りを見渡すが、誰も連絡が入っていないらしい。
「ムキィー! なんで私のところに帰ってこないのよ」
「……ローゼ様?」
「この世界で一番可愛いのは誰よ?」
「……ローゼ様です」
ローゼの言葉にガーゴイル達も混乱していた。
ローゼは復活してから以前より性格が変わり、男性らしさがなくなっていた。
「そうよ! この色欲の魔族である私のはずよ」
「その通りです。あのガーゴイル達が少しおかしいのです」
それを聞いたローゼは少しずつ落ち着きを取り戻す。
「では、あの森でやられたわけではないんだな?」
「だと思われます。誰一人とも情報が共有されていません」
ガーゴイル達は自身が死ぬ時には、仲間達に自動で今までの情報が共有されるようになっている。
通称"オカマネットワーク"
偵察隊としては便利な魔物のため、ローゼは森にガーゴイルを送っていた。
「無事なら良いけど、それでも私のことを忘れるってひどくなーい?」
「……」
「あなた達も無視するの……ね?」
「いや、そんなことはありません。ただ、少しローゼ様が以前と変わられて驚いているだけです」
ガーゴイルの言葉にローゼは首を傾げていた。
「もしかして、気づかれてないんですか?」
どうやら本人は自身の変化に気づいてないようだ。
「それで、どうしましょう? 私達も偵察に行った方がよろしいでしょうか?」
「そうね……一度私も一緒に向かうわ」
「お体は大丈夫ですか?」
「もちのろんよ! あなた達を放っておいて私だけここで待つなんて嫌よ?」
「ローゼ様……」
ローゼの言葉にガーゴイル達は感動していた。
そこまで、ローゼが自分たちのことを思っているとは思いもしてなかったのだろう。
「だって、ここは汚いわ! 掃除する者もいないし、ブラウニーはどこ行ったのかしら」
どうやらローゼは単純に汚い屋敷に居たくなかったらしい。
汚してるのはお前だろうとガーゴイル達は思っていたが、誰もツッコミを入れられなかった。
それよりもさっきの感動を返してくれと思っているのだろうか。
「では、皆で屋敷に向かうってことでいいですか?」
「ええ、みんなで移住するの! 引っ越し楽しみだわ」
ローゼの一言で、ガーゴイルと色欲魔族であるローゼは慶達がいる森に勝手に移住することが決まった。
そんなことを知らない慶達は、急に魔族が来ることを後で知ることになった。
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