第35話 ガーゴイルのその後
いざリハビリを始めるとガーゴイル達は誰も止められなかった。
「あー、そこいいわ! もっと奥までー!」
「あん、あん、いいわ!」
「もっと激しくちょうだい!」
「……」
俺はただ単に筋肉を解したり、関節可動域訓練しているだけだ。
それなのにガーゴイル達はずっとこんな反応をしている。
「お前ら、いい加減にしろー!」
「いやーん、魔王様ー!」
俺が怒ってもガーゴイル達にしたらご褒美にしかならなかった。
しかもガーゴイルはリハビリを終えても帰ろうとはせずに永住する準備をしていた。
そんなガーゴイル達を見て、ゴーレムに魔族のことについて基本的なことを教えてもらうことにした。
「魔王様は魔族をどこまで知っていますか?」
「いや、全くわからないな」
転移した時に教えられた知識しかなく、その内容は人間達の敵としか聞いていない。
「魔族は七つの罪源に分かれている。"傲慢・嫉妬・憤怒・怠惰・強欲・暴食・色欲"の七種類で、ただその欲望が強いだけで、さほど人間と変わらないだろう」
七つの財源とは、キリスト教において罪の根源とされており、七つの悪しき感情および欲望を指す言葉である。
その欲望が魔族は人間より強いだけで、特に人間に対して何も思っていないらしい。
「ただ、周期的に魔王を決める魔族の争いはあるが、それを勝手に人間達が勘違いしているんだ」
魔物のスタンピードは単純に魔族の争いに巻き込まれないように逃げているだけだが、それをスタンピードと言われ人間領に攻めてきていると言われている。
本当に人間の都合で戦わされている可哀想なやつらなんだろう。
「なんとも言えないな……」
「だから魔王様は人間なのに魔物と一緒に生活していることが不思議です」
「まぁ……俺にも色々あるんだよ」
俺としては人間といるより、魔物と一緒にいた方が安全なのだ。
「それであいつらはどこの手下なんだ?」
「ガーゴイルは"色欲"のインキュバスの手下になります」
インキュバスと聞いて、俺は何かわからなかった。
サキュバスは知っていたが、その仲間なのだろうか。
ただ、言えるのはガーゴイル達のボスは只者じゃないはずだ。
そんな真面目な話をしていると、ガーゴイル達は俺の前に並び出した。
「あら、魔王様! 私の筋肉はどうかしら」
準備を終えたガーゴイルはサイドチェストというポージングをしていた。
どうやら筋力訓練を気に入ったらしい。鍛えた筋肉を俺に見せつけていた。
「ああ、いいんじゃないか」
羽が付いているからか大胸筋が発達しているを
「胸がドキドキ弾けるー」
何やらいつもガーゴイル同士で掛け声をして盛り上げているらしい。
「……」
正直リハビリ室がボディビルの試合会場になっているため、やめてほしいが魔物が増えたため毎日楽しい日々を過ごせている。
「あっ、そうだ。せっかくならメディカルフィットネスとか始めたらどうだ?」
俺はふとリハビリが終了した人達がジムに通っていることを思い出した。
機能が回復し、日常生活に戻れても身体機能維持するためには、続けて運動することは重要になる。
そんな、人……いや、魔物達に向けて運動する場所を提供するのも良い考えだ。
「んー、魔王様の頼みなら仕方ないわね」
なんやかんやでガーゴイルもやる気のようだ。
ポージングを変えて、ダブルバイセップス・フロントをやっていた。
「おっ、誰でも悩殺上腕二頭筋!」
「……」
ガーゴイル達のポージングと掛け声はその後も続いていた。
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