第33話 ガーゴイル

「ぬうぁー!」


 空から埃が落ちて……いや、埃が落ちてくるようにふわふわとガーゴイルが落ちてきている。


 必死に上昇しようとするが、廃用症候群で筋力が足りてないのだろう。


「魔王様、ガーゴイルが落ちてきてますね」


 空からガーゴイルが落ちてくるのにも関わらず、ゴーレムは特に焦ることもなく落ち着いていた。


「ちょっ……早く逃げないと」


「あっ、魔王様は人間でしたね」


 人間じゃなければ避けなくてもいいのか……。


 すぐにゴーレムは俺を肩に抱えるとガーゴイルから距離を取るように逃げた。


 今後介助が必要な患者が来たらゴーレムに任せようかと思うほど、丸みを帯びたゴーレムの肩は安定していた。


 しばらくすると、ガーゴイルは力尽きたのか勢いよく落下してきた。


 砂は舞い上がり、風で吹き飛ばされるとそこには地面に打ち付けられて倒れているガーゴイルの姿がいた。


「あれって大丈夫なのか?」


 俺はガーゴイルに指を差すとゴーレムは首を横に振っていた。


「多分大丈夫ではないと思いますが……」


 なにか言おうとしていたが、突然大きな音に他の魔物達も街の中から集まってきた。


「おーい、魔王様大丈夫だい?」


「ああ、大丈夫だ」


 コボルトはゴーレムの肩にいる俺を見て安心していた。


 集まったコボルトやゴブリン達は狩猟に行くメンバーでもないが、その手には武器を持っていた。


 この街の魔物達は頼もしい限りだ。


「あいつらを捕まえるぞ!」


 街の警備を務めているスケルトン達が集まり、ガーゴイル達を囲んだ。


 初めは抵抗する声が聞こえていたが、すぐに諦めたのか縄に縛られた状態で引きずられていた。


 何か細かく縛り方をガーゴイルから指導されていた。 


「魔王様、ガーゴイル達を捕らえました」


「あん……いいわ。ほんとに乱暴なんだから」


 スケルトン達は綺麗に整列していたが、それよりも後ろの縛られている存在が気になった。


「あっ、あの……」


 スケルトンの後ろでウインクをしている。


「魔王様、そこはスケルトン達を褒めてください」


 後ろに立っていたゴーレムが声をかけてきた。きっと俺が迷っていると思ったのだろう。


「スケルトン達良くやった」


「ありがたい言葉です。って何硬いこと言ってるんだよ! あっ、今俺達硬くなってるだった」


 スケルトン達は相変わらずのノリツッコミとテンションだ。


 だが、後ろからのウインクの嵐がすごいのだ。


 本当に廃用症候群かもう一度視診すると、確かに視診から表示されたウィンドウには"廃用症候群"と書いてあった。


「あのー、ガーゴイルって元からあんな感じなんですか?」


 ゴーレムは何を聞いているんだという表情で俺を見ていた。


 どうやら、ガーゴイルはあれが本性らしい。


「ああん魔王様、なぜ私達のアピールを無視するのよ!」


 ついに待ちきれなかったのか、ガーゴイル達が話し出した。


「いや、初めてガーゴイルを見たもので……」


「いやん、私達が初体験ですって。ああん、縄がいい感じに締まるわ」


 何か初体験という言葉にガーゴイル達が反応し出していた。


 それよりも見た目がもうツッコミを入れずにはいられなかった。


「おい、なんで亀甲縛りなんだよ!」


 ガーゴイル達は"亀甲縛り"をされて捕まっていたのだ。

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