第31話 引越ししたら街になってました

 リハビリ小屋に戻った俺は魔物達に話をすることにした。


「次に移動する街を決めた。今度はそこに通院してきて欲しい」


 俺は魔物達に伝えてる、全員が首を傾けていた。


 なぜかとぼけた顔であっけらかんとしていた。


「あのー、魔王様ちょっと確認したいのだい」


 申し訳なさそうに声を上げたのは、新しい街まで護衛をしてくれたコボルトだった。


「あっ、どうぞ!」


「私達はみんな魔王様に着いていく予定だい」


「……えっ!?」


 俺はスライムとスケルトン達を新しい屋敷に連れて行く予定だった。


 しかし、魔物達の話ではコボルトとゴブリンを中心に移動することになっていたのだ。


「魔王様ダメなのか?」


 コボルトは目を潤ませてこちらをずっと見ていた。


 その瞳は昔テレビCMで見たことある懐かしい感じがした。


「もう来たいやつはみんなついて来い!」


「はい、魔王様についていくだい!」


 コボルトもゴブリンもついて行く気満々で、すぐに荷物をまとめると言ってリハビリ小屋から出て行った。


「この小屋も今日でおさらばか……」


 この世界に転移してからを振り返ると懐かしく思い出ばかりだ。


 あれからどれくらい経ったかはわからないが、とりあえず生活の基盤はリハビリでどうにかなっている。


 人間とは接していないが、それでも魔物達が優しくて何不自由なく生活出来ている。


 俺は感謝を込めて小屋の掃除をしてから移動する準備を始めた。





「よし、準備もできたし行こうか!」


 俺はスライムとスケルトン達とともに小屋の前で並んでいた。


「今までありがとうございました」


 俺達は小屋にお礼を伝えると、続けてスライムとスケルトン達も頭を下げていた。


 一瞬どこからか"こちらこそありがとう"と声が聞こえた気がした。


 街までの道中はスケルトン達が護衛を務めることになっていた。


 途中知能が低い魔物や動物も出てくるが、スケルトン達が追い払った。


 思ったよりもスケルトン達は強く、様々な魔物の骨格から出来ているスケルトンの連携攻撃とメタルスライムのボディの鉄壁の守りで傷一つできていない。


「魔王様もう少しです」


 ちなみに今回も案内はスライムに任せている。


 俺が勝手に行動すると目的地につかない可能性の方が高いとみんなに怒られたのだ。


 前回のスケルトンの住処で迷子になっていたのを魔物達は覚えているのだろう。


「魔王様着きました」


 木の間を潜り抜けながら、スケルトン達に囲まれて移動していたため、どの辺を歩いているのかは全くわかっていない。


 だがスライムの声に視線をあげるとそこには見たことない物が存在していた。


「あれ?」


 ボロボロだった街が1日でしっかりとした街になっていたのだ。


 外壁もレンガのような固めた土で出来ており、門らしきものも出来ていた。


「ゴーレムさんどういうことですか?」


 門の横に立っているゴーレムに声をかけると、軽く頭を下げた後に話を始めた。


 動きも軽快のためどうやら腰の調子は良さそうだ。


「魔王様お待ちしておりました。皆さんが来ると聞いていたため、綺麗に整えておきました」


 どうやらこのゴーレムは魔法の適正もあるようで、魔法で外壁を作ったと言っていた。


「昨日、コボルトやゴブリンも到着されています」


 昨日話をして解散したすぐにコボルトとゴブリン達は先に移動していたらしい。


 街の中に入ると、見た目は完璧に街となっていた。


 そして、思ったよりもコボルトとゴブリンの数は多く、大人数の群れだったことをその時初めて知ることとなった。


「魔王様! ここで商いを始めたのでぜひ来てください」


 屋敷へ向かう途中に魔物達から声をかけられた。


 どうやら、自身の役割をみつけるために元々狩りに出ていなかった者を中心に、すぐにお店を始めることになったようだ。


 ゴブリン達の話ではブラウニーが定期的に家を綺麗にしていたおかげもあるのだろう。


 そして、発展したのは街の中や外壁だけではなく屋敷自体も変化していた。


 いつのまにか庭らしきものも出来ており、屋敷の中に入ると少なかった家具以外にも調度品もしっかり用意されていた。


 改めてブラウニーの凄さを実感し、屋敷の中の状態を確認しながら用意していた食べ物を隠しながら回った。


 ブラウニーってひょっとして猫型ロボットなのだろうか……。

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