第28話 ゴーレムは腰痛持ちらしいです

 俺は四つ這いで倒れているゴーレムに近づくと、ゴーレムは震えていた。


「あのー、大丈夫ですか?」


「あっ……いや、すまない。立てなくなった」


 ゴーレムは四つ這いのまま動けなくなっていたのだ。


 俺は手伝おうとするが、さすが元理学療法士でも2m以上を超えている岩の塊を持ち上げることはできない。


「魔王様無理だい!」


 コボルトに手伝ってもらうが、びくともせずゴブリンにも助けを求めるが小さい魔物達ではどうしようもなかった。


「んー、どうしようかな」


 俺はしばらくゴーレムを見ているといつも通りにウィンドウが表示された。



――腰痛



「うん、思った通りだな……」


 目の前で四つ這いになってるゴーレムは自身の腰を叩いていた。


「いつも腰が痛いんですか?」


「なぁ!? なぜわかるんですか!」


 俺の問いにゴーレムの目はキラキラと輝いていた。


 そして、いつのまにか言葉も敬語になっている。


「いや、それだけ腰を押さえていたらわかるよ」


 誰が見てもわかる状態に魔物達はうなづいていた。


 ひょっとして、ゴーレムは体が岩のため、知能も低いのだろうか。脳も岩なら仕方ないしな。


「おい、魔王様は良くてもお主らは許さんぞ」


「……」


「何か悪いことをしたか?」


「わかんない」


「岩だから頭も硬いんだな」


 知能に関しては他の魔物も同じ意見なんだろう。


 それにしても気づいた時にはゴーレムからも魔王様と呼ばれていた。


「とりあえずそのままうつ伏せに寝てください」


 俺はゴーレムをうつ伏せにして腰を触れると触診が発動しウィンドウが表示された。



――脊柱起立筋、腰方形筋



 スライムの時にも出た同じウィンドウだ。


 腰痛持ちのゴーレムは腰の筋肉が凝り溜まっているのだろう。


「とりあえず、解すので少し上に乗ってもいいですか?」


 体が大きなゴーレムを横から徒手でアプローチするには腕の長さが足りなかった。


 基本的には患者を跨いだり乗ったりするのは御法度だ。


「ああ、魔王様に乗ってもらえるなら光栄です」


「……」


 何か変な言葉が聞こえたが、俺はそのまま無視をすることにした。


 この仕事をしていればスルースキルも高くなるもんだ。


 ゴーレムの腰に触れると思った通り硬かった。


 うん……岩だからな。


「ああ、気持ちいい。あああん!」


「……」


「あん、そこそこ。もっと奥にー!」


「あん! あん! ああああああん!」


「おい、静かにしろ」


 俺のスルースキルも我慢出来なかった。声だけ聞いたら男が喘いでいるのだ。


 やっと静かになり、再び本腰を入れてリハビリを再開した。


 岩に徒手でアプローチしても普通は何も変わらないだろう。


 この時の俺はそう思っていた。

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