第26話 キラキラな瞳

 改めてサハギンの足を見ると人間とは程遠く離れていた。しかし、出てくるウィンドウは人間と変わらなかった。


 基本的には扁平足、足底腱膜、後脛骨筋が表示されていた。


「そういえば、サハギンは靴を履いたりはしないのか?」


「履かないよ? それじゃあ、泳ぎにくいじゃん」


 水溜りにいるサハギンが靴を履かないのは当たり前だった。


 靴を履くのであればインソールと言われる、いわゆる中敷きでアーチを調整すれば少しは衝撃が吸収できるようになるが、靴を履かないサハギンでは無理だ。


「じゃあ、まずは後脛骨筋を鍛えようか」


 後脛骨筋はふくらはぎのところから内くるぶしを通り、土踏まずに付いている筋肉だ。


 その筋がしっかり支えれることによって、アーチが崩れて下がることを防いでくれる。


 しかし、扁平足になっていることもあり中々治療効果は得られない可能性が高い。


「とりあえずは言ったことをやってもらってもいいかな? しばらくは様子を見てから考えようか」


 サハギンは俺の言葉に目をキラキラと光らせていた。


 ギョロっとした目がキラキラ光っても可愛くはない。


 その辺はコボルトやスライムとは違い魔物らしい。


「わっ、わかった! 絶対頑張るぞ」


 それでもひょっとしたら冒険ができるのかもしれないと、一つの希望を与えることができたなら理学療法士としては良いことだ。


「じゃあ、これとこれとこれをよろしくね」


 提案したリハビリは簡単だが回数は多めだ。


 それだけ筋肉を使ってないからな。


「……魔王様だ」


「ん?」


「いや……」


 なぜかさっきまで輝いていたサハギンの目は、リハビリの内容をみて輝きは消えてしまった。


 そんなに運動量が多かったか……?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る