第25話 足が疲れやすいようです
サハギンの言葉に臨戦態勢になっていたコボルトとゴブリンは少し力を緩めた。
そもそもサハギン自体が優しい魔物のため、何か起きた時の備え程度でそこまで警戒はしていなかったらしい。
「魔王様、サハギンさんがこの前の謝罪とリハビリをしたいって理由で来ましたよ」
隣にいたスライムがサハギンが来た理由を説明してくれた。
事前にサハギンがスライムに訪れた理由を伝えて、俺が警戒しないようにしてくれたのだろう。
「ああ、こちらこそすみません」
そこは日本人だからなのか、そんなサハギンに対して俺もすぐに謝った。
「このま☆♪→4*○〆しよう〒:~l_#/&#思った……」
「あのー、もう一度言ってもらってもいいですか?」
長い文章になると半魚人なのか聞こえにくかった。
顔が魚なのが関係しているのか?
「この前は少し挨拶をしようと思っただけで、あそこまで驚くとは思わなかったんだ」
少しゆっくりと話してもらうと、やっと何を言っているのか理解できるレベルだった。
水面から急に顔を出すのは、サハギン達にとっては挨拶でよく行う習慣らしい。
それを知らない俺は半魚人の姿に驚いてしまった。
「いえいえ、それでリハビリがしたいって何かあったんですか?」
「これを治せないか?」
サハギンが俺に足を見せるように上げると、ウィンドウが表示された。
――扁平足
扁平足とは、足のアーチ構造が変わり、土踏まずと呼ばれている縦アーチが崩れて土踏まずがなくなっている足のことだ。
アーチ構造が崩れることで、足への衝撃を吸収できなかったり、歩く時に前へ推進力を加えることがしにくくなってしまう。
そのため、サハギンはペタペタとした歩きをしていたのだろう。
そういえば、この前も足底腱膜とも表示されていた。
「ひょっとして足が疲れやすいのを治したいんですか?」
俺の言葉にサハギンは驚いていた。
俺はじっくりとサハギンの足を見たが構造から変わっていた。
そもそも半魚人ということもあり、足で水を掻きやすくするために水掻きやヒレみたいなものがついているのだ。
「水掻きとヒレがあるから、陸に適してないですよね?」
俺の言葉に他の魔物達は全員頷いていた。
魔物毎に体の特徴があるため、生息地に関してはどうしようもないことなんだ。
「\→×7€6」1l_jes#」
「えっ? なんて?」
「……いろんな世界を冒険したいんだ!」
興奮していたのか、一度目は聞こえなかったが、二度目はしっかり聞き取れた。
どうやらサハギンは冒険をするのが夢らしい。
結構しっかりとした大きな夢だった。
「それは水の中じゃ……」
水溜りにいるサハギンのため、何かしら水の中から行けない理由があるのだろう。
「海には強い魔物がたくさんいるんだ! シーサーペントや海龍、クーラーケンに勝てるはずがない!」
サハギンの言葉に俺は驚いた。
やはりこの世界は異世界で海には危険が多くあり、海の近くに行かなくて良かったと勉強になった。
「それで冒険が諦められなくてここに来たんだね?」
「そうなんだ」
「まぁ、出来ることはしてみますが、変化がなくても文句は言わないでくださいね?」
必死なサハギンに俺はとりあえずリハビリをすることにした。
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