第24話 再び登場

 スケルトンの問題を解決してからはリハビリ小屋も賑やかになっていた。


 スライム、コボルト、ゴブリン、スケルトンと下位の魔物であるが種類も増えてきた。


 最近驚いたことといえば、ゴブリンの顔色に変化がなくなったことだ。


 ただの黄色の小人になれば人間とそこまで変化はなかった。


 そして、いつのまにかゴブリンの患者もさらに増え人数の規模はリハビリクリニック

超えていた。


「はぁー、今日も忙しいな」


 魔物の数も増えたため前に比べてリハビリ時間も増えてたのだ。


「魔王様! 魔王様!」


 スライムは木の実で作った器に水を入れて渡した。


「おー、ありがとう」


 スライムはリハビリ小屋の助手として働いている。


 ここ最近は幼女の姿だと、コミュニケーションが取れることを知り、スライムの姿に戻ることは無くなった。


「よし休憩は終わり! 今度は集団リハビリをしようか」


 基本的には初回から数回は個別に行い、コボルトやゴブリンなどの数が多い魔物しかいないため、その後は集団リハビリで提供している。


「じゃあ、スケルトン来て!」


 そこで登場するのはスケルトン達だ。


 集団リハビリに参加する魔物のスケルトンを呼び、一緒に動きの模倣をしながら関節の動きを紹介している。


 例えば、ゴブリンとコボルトの違いだと犬に近いコボルトは踵が浮いた状態で立っている。


 構造的にはヒラメ筋と腓腹筋でふくらはぎの筋肉として直立に支えているが、ヒラメ筋が発達していないため、コボルトは踵を上げて立っている。


 逆にヒラメ筋も腓腹筋も発達していないゴブリンは、血液を戻す力もなく、立つだけの力が備わってないため、常にふらふらしている。


「じゃあ、今日はカーフレイズをします」


 単純に踵を床に付けた状態から踵を上げて下げるを繰り返す運動だ。


 ヒラメ筋と腓腹筋を効率的に自身の体重をかけながら行うのに良い方法だ。


「魔王様上がりません!」


 声を発していたのはゴブリンだった。


 簡単な運動だが、体を支えるために真上に背伸びするように動くだけだが、そもそも筋力が足らないため上がらないのだ。


「踵がつかないぞ!」


 踵がつかないのはコボルト達だ。


 普段からつま先立ちで立っているため、筋肉の伸長性が乏しいのと、伸ばしながら力を入れることができなかった。


 そんな中スケルトン達は軽々とやっていた。


 基本的に筋肉が動くことで、骨が引っ張られて体が動いているが、筋肉がないのに動いているスケルトン達は俺にとっては不思議な存在だ。


「じゃあ、この運動は今度の時までの課題です」


 このように毎回運動内容の課題を出して、自身でセルフエクササイズをやってもらっている。


 プログラム内容も初めに来たゴブリンを指導しながらやっていたため、群れに帰ってからはそのゴブリンを中心にやっているらしい。


 そんな中、木が鳴り響くように扉を叩く音がした。


 基本的に通っている魔物達は扉を叩かずに入ってくるため、新しい魔物なんだろう。


「スライム案内してあげて」


 俺は助手のスライムに声をかけると、何かを話してから中に案内していた。


 歩き方が少し変わっており、少しペタペタとした音が聞こえてきた。


「少し待って……ぎゃあー!」


 俺は振り返るとすぐに驚きの声をあげてしまった。


 それに反応したのかコボルトとゴブリンはすぐに構えて臨戦態勢だ。


「魔王様、大丈夫か!」


 いつのまにかコボルトとゴブリンが俺を中心に囲んでいた。


 ここまで守ってくれるなら怖いものはない。


「ああ、大丈夫だけど……」


 そんな中、ペタペタと俺の方に魔物は近づいてきた。


「この前は驚かせてすまないね」


 声を若干発しにくそうだが、どうにか聞こえるレベルだった。


 訪れたのはこの前水溜りで驚かされた半魚人のサハギンだった。

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