第21話 転職活動
死ぬ覚悟を決めたのに骨標本の反応は違った。
「そんなに嬉しかったんかー!」
骨標本は俺の横で一緒に寝てこちらを見ていた。思ったよりもお調子者の性格のようだ。
オークとは違い食料にもならず、魔物には必ずある魔石という物も存在しないグールは嫌われ者の存在だった。
グールには魔石は存在するため、異臭はするがスケルトンよりは価値があること後で知った。
「まぁ、俺達感覚ないから痛みはほとんど感じてないけどな!?」
あれだけ痛みがある雰囲気を出していたが、感覚神経も通っていないため痛みも感じないらしい。
「えっ!? 骨って最強じゃん!」
慶は楽しそうに叩いているとポロッと何かが落ちた。
「……」
「……」
「うぉー、腕が折れたじゃないか!」
骨標本の上腕骨は完全に骨折し割れてしまっていた。
「ごめん、ごめん」
「はぁー、これじゃあ生きていけないじゃん……。まぁ、もう死んでいるけどな!」
骨標本は骨折していても元気だった。
むしろ下顎骨をカタカタと動かし不気味に笑っていた。
そのままカタカタ動かして外れなければいいが……。
「ならうちで働くか?」
俺の提案に骨標本は驚きを隠せなかった。
体で表現できないほど驚いていた。
「驚き方が独特だな」
「ははは、スケルトンってみんなこんなもんだぞ?」
「スケルトン……?」
「俺達魔物だぞ?」
「えっ、うそ……」
「えっ、俺をなんだと思ってたんだ?」
「ほ……ね……?」
「いやいや、骨ではあるけど……」
「まぢかー。逆に俺人間だけど大丈夫か?」
「人……間……!?」
お互いに時間が止まった。
スケルトンと人間は敵同士。
お互いの存在がわかったらすぐに戦う存在だ。
「いやー、でも魔物っていい奴が多いしいいんじゃね?」
そんな中、普段から魔物と過ごしている俺にとっては馴染みのある存在だ。
「おお……、お前がいいならいいんじゃないか?」
どこか俺の存在にスケルトンが戸惑っている。
「とりあえず、友好の証として」
俺はスケルトンに握手をするために右手を出した。
「あっ、こっちの腕は折れていたな」
しかし、スケルトンは右手が折れて地面に落ちていたため左手を差し出した。
「こっちの世界に来て、こんなにいい事があるなんて最高だな」
俺はスケルトンの左手を握った。
それも嬉しさのあまりまた強く握ってしまった。
「痛っ!? って痛みなかったわーい!」
指先がポロポロと欠けていた。骨折していたのだ。
しかも、指先のため骨が細かく風で飛ばされて……。
「……」
「……」
「ははは……」
俺は視線を戻すとスケルトンの目の奥は光っていた。
あっ、目はないから眼窩だったか。
「うぉーい!」
スケルトンは俺に襲い掛かった。
しかし、すぐに折れるぐらいの骨だからか、歩くたびに骨が軋み崩れ落ちていた。
「あまり無理しない方がいいぞ?」
「いやいや、お前のせいだろうが!」
「あっ、そうだった」
「もう、いいわ」
なんやかんやで森で迷子になっていが、俺はスケルトンと楽しい時間を過ごしていた。
そして……スケルトンは新しい就職先を見つけた。
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